「ここ!」という悲願校がない地域は、わかりやすいところだと岩手、群馬、滋賀、京都、山口、香川、長崎、佐賀、熊本といった県である。
その背景は一定数の常連校があって、そのほかの高校との実力差が大きい。群雄活況かつ甲子園出場経験も多いなど様々。もちろん「文句ナシに悲願校!」といえる高校が「卒業」して間もない、というケースもある。
こうした都道府県の場合、各地方大会での上位校に成績に応じたポイントを加算し、そのランキングを作ってみると面白かったりする。
たとえば決勝進出はないが、ベスト8くらいには常に顔を出す甲子園未出場校や、わずかな期間で力をつけてきた成長株の甲子園未出場校の名が上位にきたりするからである。いわば「悲願校の芽」が見えるともいえるかもしれない(当該校にとってみたら、悲願校なんて呼ばれないうちに初の甲子園を決めたいところだろうが……)。
そこで今回は、2013年から2015年の春・夏・秋の各大会の成績を8強1ポイント、4強2ポイント、準優勝3ポイント、優勝4ポイントとして集計し、ランキング。そのなかから甲子園未出場校をピックアップしてみた。結果は以下の通りである。
岩手 1位:水沢
群馬 1位:伊勢崎清明
滋賀 1位:八幡工
京都 1位:京都すばる
山口 1位:下関国際
香川 1位:大手前高松
佐賀 1位:神埼清明
長崎 1位:島原農
熊本 1位:熊本国府、熊本北
上記のうち水沢や京都すばるは強力な悲願校が見当たらないなかで、「あえていうなら」ということで過去にも名前が挙がった高校。ポイントはそれがある意味、間違ってはいなかったことを教えてくれる。
一方、伊勢崎清明や下関国際、大手前高松、神埼清明、熊本国府などは近年、各県内で力をつけてきた高校として認知されている高校。「悲願」というにはまだ好成績を残した年月が足りないかも、という見方があるかもしれないが、今後は真性「悲願校」になる可能性は十分だ。
一方、正直ノーマークだったのが熊本北と八幡工。ともに上位進出が目立ちつつあったが、これほどとは。ただ、これが一時期だけのものなのか、それともまさに実力校への道を歩みつつあるのか、指導体制なども含めて一度、詳しく調べてみる価値はある。まさに「悲願校の芽」である。
そして島原農。全国的に商業や工業などの実業系の高校が減少。あるいは野球部の実力が落ちていく傾向にあるなか、さらに希少な存在の農業高校ながらこの成績は立派。こうした背景や九州大会出場歴もある実績を考えると、長崎の新たな悲願校にふさわしい存在かもしれない。
最後に触れておきたいのが、甲子園出場がないにも関わらずポイントで県3位以内につけていた埼玉の川越東、徳島の生光学園、鹿児島の鹿児島城西の3校だ。
もともと悲願校に名前が挙がっていた高校だが、ポイントという客観的な数字からも、それが証明されといっても過言ではないだろう。もし、何かアクシデントがなければ、この3校は近いうち甲子園で見られるはずだ……と、思いつつ、生光学園については10年以上経っている。
やはり高校野球、一筋縄ではいかないのである。
文=田澤健一郎(たざわ・けんいちろう)