4月4日の阪神対ヤクルト。この1戦で起こった乱闘劇では「矢野燿大コーチvsバレンティン」のバトルがクローズアップされた。
とはいえ、この乱闘劇のきっかけは阪神の矢野コーチとヤクルトのバレンティンではなかった。きっかけは別のところにあった。
阪神の先発・藤浪晋太郎は、この日も荒れ球。際どいボールも混じえ4回までに与えた四球は8個。不穏な気配のなか、5回に畠山和洋の左肩に死球を与える。畠山は頭部付近にきた球をガードするように避けたが、ヘルメットを飛ばしながら倒れ、頭部直撃にも見える一球だった。
畠山が立ち上がって藤浪をにらみつけると、グラウンドは一気にヒートアップ。ホームベース付近は、あっという間におしくらまんじゅう状態に。
その流れに乗り遅れまいと、ベンチから駆けつけるバレンティン。そして、その横にたまたまいたのが矢野コーチだった。185センチ100キロのバレンティンが人混みをかきわけようとして振った右腕に、181センチ77キロの矢野コーチはふっ飛ばされてしまう。エキサイトした矢野コーチは、即座に立ち上がってジャンピングニーで反撃するも、バレンティンには効かず……。両軍が入り乱れてひとしきりガチャガチャやったのち、審判からバレンティンと矢野コーチの退場と、両軍に対する警告が発せられる。
翌日には、厳重注意とともに、バレンティンが20万円、矢野コーチが15万円という制裁金がNPBから課された。
6月6日のソフトバンク対巨人でも、一触即発のシーンがあった。6回裏の巨人の攻撃、打席の陽岱鋼に対してソフトバンクの森唯斗が投じた6球目のストレートが陽の頭部をまともに直撃する。
一旦は倒れ込んだ陽だったが、すぐさま立ち上がって激高。日本ハム時代のチームメイトだった捕手・鶴岡慎也が止めに入るも振り払い、森に対する怒りを露わにした。両軍ベンチから一気に選手や首脳陣が飛び出してきて、スタジアムは騒然となった。
その後は大事に至らずクールダウンしたが、球審からは「森を危険球で退場とし、警告試合を宣告する」とのアナウンス。陽はベンチに下がり代走が送られた。
球場がざわつくなか、ネクストバッターズサークルにいた坂本勇人が陽を抱きかかえ、怒りをなだめるシーンが印象的だった。
9月1日のソフトバンク対楽天戦でも乱闘騒ぎがあった。
マウンドには今季、最多勝のタイトルを獲得したソフトバンクの東浜巨、打席には楽天のアマダー。2ボール2ストライクから東浜が投じたストレートは顔面付近の厳しいボールだった。これにアマダーがブチギレ。プロ野球史上最重量となる135キロの巨体を揺らしてマウンドに駆け寄る。その突進を細身の福田秀平や明石健志、小柄な今宮健太らソフトバンクの野手が、東浜を守るべく身を挺してブロック。彼らを突き飛ばしながら突進するシーンは、さながらプロレスラーの場外乱闘のような迫力だった。
最後はウィーラーやペゲーロらチームメイトにも制止され、どうにか引き下がったアマダーだったが、相手の選手を威嚇したとして、結局は退場に。ここでも警告試合が宣言された。
後日、NPBからアマダーへの厳重注意&制裁金10万円の処分が下された。
お気づきだろうが、バレンティンが中米カリブ海のキュラソー島出身、陽岱鋼は台湾出身、アマダーはメキシコ出身。上記の3つの乱闘とも、すべて主役は外国人選手。かつては、金田正一(元国鉄ほか)、星野仙一(元中日)や東尾修(元西武)、山崎武司(元中日ほか)など、なにかあれば「やんのか、おい!」と身を乗り出す日本人選手が少なくなかった。やはり、最近は総じておとなしくなったのだろうか。
相手にケガをするのはもちろんNGだが、こういった感情むき出しのバトルはも、たまに見る分には悪くないような気もする。
文=藤山剣(ふじやま・けん)