週刊野球太郎
中学、高校、プロ・・・すべての野球ファンのための情報サイト

《野球太郎的2016年プロ野球MVP》10勝&22本塁打。規格外の力で想像の斜め上をゆく大谷翔平


 日本ハムの10年ぶり3回目の日本一で幕を閉じた今年のプロ野球。週刊野球太郎では「野球太郎的2016年プロ野球MVP&MIP」を2週に渡って連載する。

 今回は「野球太郎的2016年プロ野球MVP」を選出! 『野球太郎』の持木秀仁編集長と、週刊野球太郎ライター陣のニューカマー・山岸健人氏が2016年シーズンを振り返りながら、MVPに選んだのはやはり“あの男”しかいなかった。

2年連続トリプルスリーの山田哲人ですら霞ませた二刀流


山岸:ズバリ、「野球太郎的2016年プロ野球MVP」は誰でしょうか?

持木:大谷翔平選手(日本ハム)以外ないですよね。

山岸:そうですよね(笑)

持木:二刀流はますます前人未到の領域に突入し、今季は、投げては2ケタ勝利(10勝)。打っては、規定打席には達していませんが、打率.322、22本塁打、67打点を記録しました。

山岸:しかも、日本球界最速の165キロもマーク。

持木:ここぞという場面でもアッと驚くホームランを打ちましたし、最後はチームを日本一に導きました。MVPは大谷以外考えられないです。山田哲人選手(ヤクルト)の2年連続トリプルスリーですら、まったく霞んでしまいました。

山岸:去年の流行語大賞となったトリプルスリーも、遠い昔のことのようです……

持木:山田選手の2年連続トリプルスリーという記録もものすごいことなんですけどね。

山岸:その偉業をも霞ませる大谷選手は本当に規格外です。

持木:大谷選手がプロに入ったとき、二刀流だと投打のどちらも中途半端になって、ダメになってしまうんじゃないかと思っていました。でも結果的に、私の想像を遥かに超える活躍を大谷選手は見せています。「二刀流」のすごみは、年々進化していますよね。

山岸:もはや「二刀流がいいのか、悪いのか」という人すらいなくなって、もう大谷選手は「そういうもの」というか、「大谷という1つの枠」みたいになりましたよね。その上で、今季はいい悪いではなく「二刀流をいかに使うか」がポイントになったりもしました。

持木:そうですね。昨季まではわりと「決まった使い方」でしたけど、今季は勝負どころでは、今までの使い方を打ち破って、少し無茶をさせてでも起用していました。もうこの先は、「大谷選手と栗山英樹監督はどこを目指しているんだろう」という感じですね。

山岸:2人にしかわからない世界ですよね。日本一を達成した後に、栗山監督から大谷選手へ向けた直筆の手紙が公開されました。そこには「翔平“まだまだ”」という言葉があったんですけど、栗山監督はもっと「上」を見据えているんだなと思いました。その「上」というのは、やはりメジャーのことでしょうか。

持木:メジャーには間違いなくいくでしょう。

山岸:早ければ来年のオフにはメジャー移籍の可能性があると報道されていますね。

持木:昨年までは「メジャーでは投手で」という声が多かったですが、今季のバッティングを見て、「野手で獲得したい」という声も上がっています。

山岸:打撃面での規格外ということでは、侍ジャパンの強化試合のオランダ戦で、東京ドームの天井裏に大谷選手の打球が飛びこみました。日本人選手でこんなにスケールの大きな打球を打てる選手はそうはいないですよね。

持木:東京ドームで同じことをやった日本人選手だと巨人時代の松井秀喜さん(元ヤンキース)くらいですね。

大谷翔平は極めてMIPに近いMVPでもある!


持木:大谷選手は最も印象に残るプレーをしたMIP(Most Impressive Player)に近いMVPだとも思っています。

山岸:それはどういうことでしょうか?

持木:野手の面では、いろいろなタイトルがあるなかで成績だけを見ると、どれも中途半端な数字で終わっています。

山岸:タイトルホルダーの数字からすると、どれも1歩、2歩、劣っていますね。

持木:だから投打のいずれかで圧倒的な数字を残してのMVPではないということです。でも、二刀流としては圧倒的にすごいと。ただ、そのあたりが張本勲さんのような厳格な方にありがたい一言をいただく要因になっているように感じます。

山岸:ありがたい一言ですか……。

持木:「球史に残る歴代1位の記録を達成した」という自負を持つOBの方からすると、「大谷の選手としての素質は素晴らしい」と認めつつも、「結果として成績の1つ1つは、それぞれの部門のトップではない」という意見になってしまうということです。

山岸:なるほど。ただ、若い野球ファンには、大谷選手の方がすごいと感じている人も多いと思いますが。

持木:だからこそ、大谷選手は投手、打者どちらかに専念したらどんな成績を残すのかという興味もあります。

山岸:投手としてみれば、今季はマメをつぶした影響で投げられない時期がありました。それがなければ3イニング足りなかった規定投球回に到達して、最優秀防御率も十分考えられました(タイトルを獲得したロッテ・石川歩の防御率2.16に対して、大谷は防御率1.86)。となると、投手の方がいいのではと思います。

持木:投手に専念するために体重を増やして失敗したんじゃないか、という話がありましたけど、その噂もいつの間にか消えましたね。

山岸:仮に野手に専念した場合、三冠王を獲れる可能性はありますか?

持木:今季の成績を見る限りでは三冠王の可能性はあると思います。ただ、大谷選手は投手でもあるということで、相手投手の大谷への攻め方が、他のチームの主軸打者への厳しさとは少し違っているように見えます。

山岸:打者・大谷選手に対しては「当たってもしょうがない」というくらい厳しく内角を突くことがないと。

持木:はい。例を挙げると今季の山田哲人選手は徹底的に警戒された結果、8死球とかなり当てられました。それに比べると、大谷への攻めはそこまで厳しくないですよね。

山岸:仮に、大谷選手に当ててしまったら、その投手も大変な目に合いそうですもんね……

持木:もし、大谷選手にぶつけて重いケガを負わせてしまったら、いわれのない誹謗中傷を受けて、その投手の野球人生が終わってしまうかもしれません……

山岸:大谷は「日本球界の宝」ですからね。そう考えると、いろいろな意味で恐ろしいです。

持木:だから打撃で好成績を残しているとしても、それは多少、相手投手の攻めが甘くなっているおかげかもしれないということです。もし、打者に専念したら、今とは比べものにならない厳しい内角攻めに合うはずなので、そこでどれくらいの成績を残せるのか見てみたいです。


来季の大谷に期待すること


持木:プロに入って4年間、二刀流をやってきて、昨季はだいぶん二刀流のペースに慣れてきているように見えました。

山岸:未知のこと故、手探りの起用法は続きますが、それでも昨季の起用には「踏み込んだ感」がありました。

持木:そうですね。今までは気を使って5回くらいで降板させていたところを、少しずつ長いイニングを投げさせていましたし、打席数も増えてきています。そのなかで、来季は起用法における「マックス」をどの程度に設定しているのかは気になりますね。

山岸:来季はさらに打席数を増やすようなことを栗山監督も話していました。

持木:投手としては、ある程度、真の実力を発揮してきた感があります。でも、野手としてはまだまだ底が見えていません。どこまで打者での起用を増やし、どういう成績を残すのか、という点も見ものです。

山岸:より二刀流としての働きが増していきそうですが、実際のところ、もっとこなせるものなんでしょうか。

持木:二刀流でプレーすることがどれくらいしんどいのかは、本人にしかわからないところですよね。今のところ、大谷選手は「しんどい」とは言っていませんが。

山岸:そこがすごい。あまりしんどそうに感じさせないですよね。

持木:そうですね。そういう意味では、日本ハムが強行指名したドラフトからうまく転がってくれたなと思います。仮に花巻東高から直接メジャーに行っていたら、今の大谷翔平選手はないかもしれません。多くの人の記憶から消えた何年か後に、「“あの大谷”がアメリカから帰国。日本のプロ球団に入団」というニュースがひっそりと流れる事態になっていた可能性も考えられます。

山岸:「ああ、いたなあ」という「あの人は今」状態……。そう思うと、本当に日本ハムに入ってよかったです。

持木:日本ハムなら、元気なうちにメジャーへ行かせてくれそうですしね。

山岸:はい。

持木:後はやっぱり、メジャーへ行くんだったら、張本さんたちを黙らせるような文句なしの成績で、タイトルを取ってから大手を振って行ってほしいですね。


 右に出る選手がいない圧倒的な力を見せつけ「野球太郎的2016年プロ野球MVP」に選ばれた大谷。165キロを投げ2ケタ勝利。限られた打席機会で22本塁打を放ち、日本代表でも主軸を打てるバッティングを披露。

 今の大谷は「漫画の世界からそのまま飛び出た選手」、いや「漫画でもやり過ぎ」だというレベルの選手になった。

 数年後のメジャー移籍がほぼ確実ななか、さらなる期待を受ける来季は誰をも黙らせる成績を残し、その後で海を渡ってもらいたい。


文=山岸健人(やまぎし・けんと)

記事タグ
この記事が気に入ったら
お願いします
本誌情報
雑誌最新刊 野球太郎No.32 2019ドラフト直前大特集号 好評発売中
おすすめ特集
2019ドラフト指名選手一覧
2019ドラフト特集
野球太郎ストーリーズ
野球の楽しみ方が変わる!雑誌「野球太郎」の情報サイト
週刊野球太郎会員の方はコチラ
ドコモ・ソフトバンク
ご利用の方
KDDI・auスマートパス
ご利用の方