日本だけでなく、海の向こうのメジャーリーグでもスプリングキャンプや、それに向けてのトレーニングなど、2017年シーズンをスタートさせた選手たちの様子が報じられる時期になった。
田中将大(ヤンキース)や前田健太(ドジャース)といった、来季のローテーションが約束されている選手たちには、調整にもどこか余裕が感じられる。
しかし、メジャー昇格を目指してここから過酷なサバイバルに突入する日本人投手がいる。その男の名は中後悠平だ。
中後悠平は2012年のドラフト2位で近畿大からロッテに入団。しかし、結果を残せず、2015年オフには戦力外通告を受ける。12球団合同トライアウトに参加するも、どこからも声がかからず独立リーグでの現役続行を決めていた。
ところが、そのオフの姿を収めたテレビ番組『プロ野球戦力外通告 クビを宣告された男達』がきっかけとなってダイヤモンドバックス関係者の目に留まり、翌春、マイナー契約で海を渡る。ここまででもなかなかドラマティックだが、中後の野球人生には、さらなる展開が待っていた。
左のサイドハンドで、しかも腕の高さを自在に変えられるという変則フォーム。そこから繰り出される150キロ超のストレートと、スライダー、チェンジアップなど多彩な球種を武器に、ルーキーリーグなどの下部リーグをとんとん拍子で通過。メジャーの一歩手前である3Aでも13試合で無失点という快投を見せて、2016年のシーズンを終えた。
中後はメジャー昇格に手に届くところまでたどり着いたのだ。
今季は、マイナー契約ながら招待選手としてアリゾナ州スコッツデールで行われるダイヤモンドバックスのスプリングキャンプに参加。初日の2月14日(現地時間)から、早くもブルペンに入って50球近くを投げ、感触を確かめた。
ダイヤモンドバックスは、昨シーズンから続く左腕の人材不足が解消できておらず、中後に左打者キラーのセットアッパーとして期待しているからこそのキャンプ招待といっていい。ここからシーズンに向けて結果を残し首脳陣にアピールできれば、メジャー昇格の可能性は十分ある。
日本では力を発揮できなかった中後が、アメリカで再ブレイクを果たせば、これほど痛快なこともない。ぜひとも太平洋を越えて、日本で待つ妻子の元に朗報が届く日を待ちたい。
(※写真はロッテ時代のもの)
文=藤山剣(ふじやま・けん)