続々と甲子園出場校が決まり、熱く盛り上がる高校野球。各地区の勢力図を争う注目の対決とその結果を紹介したい。
■7月21日 奈良大会3回戦
智辯学園 9対7 奈良大付
奈良大会3回戦、強豪・智辯学園がすさまじい試合を制した。対するのは、昨年、初めてとなる夏の甲子園出場を果たし、智辯学園と天理の2強に切り込む勢いの奈良大付だった。
試合は序盤から意外な展開になる。奈良大付が2回表に2点を先制すると、4回表にも4連打で2点を追加。さらには6番・福島虎太朗の3ランが飛び出し、4回表終了時点で7対0の大量リード。7回コールド圏内にまでリードを広げた。
誰もが奈良県の勢力図が書き換わったと思った。しかし、智辯学園が簡単に引き下がるはずはなかった。4回裏に2点を入れると、5回裏には3点、そして6回裏には3番・坂下翔馬のタイムリーと6番・吉村誠人の2ランでついに7点差を引っくり返した。とにかく長い攻撃だった。
さらに衝撃だったのは、4回途中から登板した1年生左腕・西村王雅の好投だ。中学時代から関西では有名な存在だったが、粘り強い投球でしっかりと奈良大付打線を抑え、オープンな試合展開にさせなかった。智辯学園のターンがずっと終わらなかったのは、西村の好投があったからこそだ。140キロに迫るストレートにスパッと決まるカーブ。3年生と言われても納得するほどの落ち着いた投球だった。
奈良大付の躍進を防いだ智辯学園の意地。奈良の勢力図は据え置きと見た。
【7月25日・兵庫大会準々決勝】
明石商 7対4 姫路南
4点ビハインドを6回から引っくり返し、昨夏の西兵庫王者のしたたかさを見せ付けた明石商。しかし、今夏の兵庫大会で観客をオッと言わせたチームは間違いなく姫路南だった。
特に驚かされたのは安定した投手陣だ。ドラフト候補にも挙がる144キロ左腕の照峰賢也に注目が集まっていたが、同じく3年生の谷大和や庄竜太郎も軽く130キロを超え、危なげのない投球。先発、中継ぎ、抑えのように役割分担し、負担を減らしながらベスト8まで勝ち上がった。高い育成力がうかがえる。
打線も体格がよく、公立進学校とは思えない充実ぶり。2年生ながら今春のセンバツでその名を世に轟かせた明石商のエース・中森俊介から序盤に4点をもぎ取った打力は“本物”と言えるだろう。
明石商、神戸国際大付が2強を固めつつあるが、“3番手”に名乗りを上げた姫路南。甲子園出場わずか1回(1958年夏)だが、上昇の匂いを感じた。
文=落合初春(おちあい・もとはる)