今季もシーズンの開幕からあっという間に9月の下旬となった。ペナントレースも優勝争い、順位争い、そして個人タイトル争いも白熱してきた。同時に、来シーズンの編成を考える時期でもある。
編成を考える上でどのチームも順位に関係なく、新戦力の補強は欠かせない。その大きな手法のひとつがFA選手の獲得である。今シーズンも何人かの主力級の選手がFA権を取得しており、その動向が注目されている。今回は先発投手の目玉となりそうな西勇輝(オリックス)を取り上げてみる。
(成績は9月12日現在)
2008年のドラフト3位でオリックスに入団した西は、初年度から中継ぎとしてマウンドに登るほどの期待をかけられていた。2年目は18試合(内1試合先発)に登板。徐々に戦力になりつつあった西がブレイクしたのは3年目の2011年のことだ。初めての2ケタ勝利(10勝)を記録し、ローテーションを任されることになると、2014年からは3年連続2ケタ勝利を達成する。
昨シーズンは故障もあり規定投球回に到達しなかったが、今シーズンを含めて5度の規定到達は誇れる数字だ。また制球がよく、今シーズンのBB%(対戦打席における四球の割合)は5.1を記録している。
この数字は菅野智之(巨人)、岸孝之(楽天)に次いで12球団中3位。四球が少なく、自滅する可能性が低い投手であるということがわかる。
ちなみに今シーズンの年俸は推定1億1000万円でBランクとなる。そのため金銭補償、人的補償ともに発生し、FA移籍となると戦力図が大きく変わる可能性が高い。
■西勇輝の今シーズンの成績
22試合/8勝12敗/144.2回/109奪三振/31与四球/防御率3.67
先発ローテーションの上位を任されてきた投手ということもあり、西がFA権を行使すれば多くの球団が手を挙げることは間違いない。
現時点ではオリックスと同じ関西圏を本拠地とする阪神を始め、複数の球団が調査を行っているとの報道があった。
もちろん、オリックスも最大限の提示で引き留め交渉を行うが、争奪戦になることは確実だ。
オリックスの投手陣を見ると、仮に西が移籍しても先発ローテーションが足りなくなるわけではない。すでに残留が決まっているアルバース、山岡泰輔、金子千尋と3人は確定。その他にも現在は離脱中だが田嶋大樹、松葉貴大、東明大貴と先発投手は揃っている。しかし枚数が揃っていたとしても、チーム1の投球回数を誇っている西の穴はとてつもなく大きい。オリックスとしては、できることなら残留してほしいのが、球団の思いとしてあるはずだ。
過去を見てもオリックスは宣言残留を認めているだけに、国内FA宣言を行ったのちにオリックスを含めた各球団と交渉の可能性はある。そう考えると、決着までに時間はかかるかもしれない。
西は昨シーズン終了後の契約更改では単年契約でサインしている。報道によると、「成績の悪かったシーズンを基準としてしまうと安くなってしまう」という理由で球団は単年契約を提示したという。
その席上で、西はポスティング移籍によるメジャーリーグ移籍を直訴していたという。もちろん球団は縦に首を振らなかったが、来シーズン中に海外FAを取得すれば、なんの見返りもなくメジャー移籍が可能となってしまう。それを避けるために今シーズン終了後にポスティング申請を行うことも十分に考えられる。
その情報をつかんでいるのか、メジャー数球団がスカウトを派遣し、西の視察を行っている。エース級としての活躍は難しくとも、ローテーションの中位から下位、もしくは制球力を生かした中継ぎでの活躍ができるとも評されており、ポスティング申請での入札の可能性はある。
西は国内FAを行使するのか、それともポスティング申請によりメジャー移籍を目指すのか、はたまた残留するのか、その動向に注目したい。
文=勝田聡(かつた・さとし)