センバツ切符をかけた秋季大会が大詰めに向かう高校野球界。一方でドラフト会議も行われるなど、週刊野球太郎の連載企画『高校野球最前線・秋の陣』では、熱戦が続く秋季大会の模様を中心にホットな情報を追っていく。今回は近年の甲子園で好成績を挙げる東京・関東地区の注目校にフォーカス!
関東大会、桐蔭学園と常総学院の一戦で珍しい出来事が起こった。
9回裏、2点を追う桐蔭学園の森敬斗が2死からサヨナラ満塁本塁打。劇的な決着に、桐蔭学園ナインはベンチから飛び出した……と、そこまではよかったが、その際に、一塁走者が本塁を踏む前に控え選手とぶつかってしまったのだ。これを見た常総学院側からは「補助行為ではないか」と物言いがついた。
補助行為に当たる判定となれば逆転劇は雲散霧消。劇的なアーチから一転して抗議の行方に注目が集まったが、判定は「フェンスオーバーの本塁打なので肉体的な補助に当たらない」としてゲームセット。
接触したベンチの選手は、裁定が下されるまで生きた気持ちがしなかったのではないだろうか。
東京が誇る名門校・早稲田実と帝京。10月20日に行われた秋季東京大会の3回戦で、11年ぶりに両雄の対決が実現した。
意外なほどに対戦期間が空いていたが、試合は早稲田実のエース・伊藤大征が10安打されながらも9回を1失点に抑え、3対1で早稲田実が勝利。近年の実績では早稲田実が一歩リードしているだけに、帝京としては意地を見せたいところだったが、12三振を喫したのが痛かった。
ちなみに前回の対戦は2007年の秋季大会準決勝で、そのときも早稲田実が7対4で勝利している。
秋季県大会で花咲徳栄、浦和学院の2強が敗れるなど、混迷の様相を呈していた埼玉。その混戦を勝ち上がったのは、1990年代に甲子園で躍進した春日部共栄だった。
2000年代に入ってからの春日部共栄は夏の甲子園には2005年、2014年と出場したが、センバツは出場できず。1997年を最後に21年間縁がない。まだ10月22日に行われた1回戦を突破したばかりだが、難関の埼玉県大会をクリアしたことで期待感は高まる。
2010年代の埼玉は花咲徳栄、浦和学院の2強時代が続く。古豪の再びの奮闘を見せたい。
関東地区から離れた話題になるが、グラウンド外では「沖縄工の部員が民家の消火活動に協力」という球児の活躍を見ることができた。
かつては大阪桐蔭時代の森友哉(西武)らがホームに転落した男性を救出して感謝状を贈られたことがあったが、命がけの人助けなどそうそうできることではない。この球児の心意気には本当に胸を打たれる。
非常時にとっさの行動ができるのは日々の練習で心と体を鍛えているからだろう。これからも自分のため、地域のために野球に励んでほしい。
文=森田真悟(もりた・しんご)