あなたは谷口雄也の本塁打を見たことがあるだろうか。
昨季、5月19日のソフトバンク戦、3点ビハインドの状況で森唯斗から放った同点3ランは、こすったような当たりがセンター方向へ放物線を描いてスタンドイン。
2015年の広島戦では、前田健太(現ドジャース)からバックスクリーンに叩き込む。この本塁打が前田にとってシーズン初被弾だった。
谷口の本塁打の特徴は、センターから逆方向への美しい弾道。大谷翔平や中田翔らの主力と比べるとどうしても「かわいすぎるルックス」が先行するが、目の覚めるような一発を見るたびに、彼が「スラッガー」だということを再認識させられるのだ。
しかし、残念ながら昨季の本塁打は1本。プロ入り通算でも5本しか打っていない。おかしい、不思議だ……。
谷口は愛工大名電高から、2010年ドラフト5位で日本ハムに入団。2年目から1軍入りを果たすが、どうしても1軍に定着できずに2軍との往復を繰り返している。
2014年頃からは、打撃よりもタレントの剛力彩芽に似たルックスが話題となり、「かわいすぎるスラッガー」という称号で有名に。ちなみに、ファンフェスタで行われた女装コンテストで谷口が優勝した際のニュースの見出しが「谷口きゅん、案の定優勝する」だった。
同期入団で同じ高卒組の西川遥輝は順調にチャンスを生かしてレギュラーを勝ち取った。一方で谷口は代打か守備固めがメインで、たまにスタメンに入ってもだいたい2打席で交代させられる状況だ。
ひと頃、日本ハムの外野陣は「球界屈指」とまで呼ばれていた。しかし、2013年に糸井嘉男がトレードでチームを去り、中田翔が内野にコンバート。そして、今オフは陽岱鋼がFA移籍と外野の主力が相次いでいなくなった。
これには球団の強い意図を感じずにはいられない。他球団ならば次々と選手を獲得して競争でふるいにかけるのが普通だ。しかし、日本ハムは若手のために積極的にポジションを開放して、彼らが台頭するのを待っているのだ(その分ベテランが割を食うのだが……)。
今のところ外野のレギュラーは西川遥輝と岡大海が有力。残る1枠を近藤健介、淺間大基、そして、巨人からトレードされた大田泰示が争うことになるだろう。
谷口は今季でプロ入り7年目。“現在残り1枠”という、この最大にして、もしかしたら最後かもしれないレギュラー獲りのチャンスを、ぜひともモノにしてほしい。
そのためにはバントや守備といった日本ハム選手の必須技術をこなすのはもちろんではあるが、彼の最大の魅力である「逆方向への飛球」を磨きに磨いて、あの美しい弾道を頻繁に見せてほしい!
文=サトウタカシ (さとう・たかし)