2009年のドラフト3位で亜細亜大から中日に入団した中田亮二。巨漢に似合わず器用なバッティングが持ち味で、未来の主砲として期待された。しかし、プロ5年間で1軍出場は80試合。20安打、本塁打ゼロと真価を発揮することができず、2014年オフ戦力外となった。
2015年より社会人のJR東海でプレー。同年の都市対抗野球、昨年の社会人野球日本選手権では、4番・一塁でフル出場した。名古屋のプロ球団から社会人チームの選手へと立場は変わったが、今も「ブーちゃん」の愛称で親しまれる人気者だ。
中田が所属するJR東海と同じ地区の強豪社会人チームといえばトヨタ自動車。そのトヨタ自動車で2016年からプレーしているのが細山田武史だ。
細山田は2008年のドラフト4位で早稲田大から横浜(現DeNA)に入団。大矢明彦監督時代には正捕手争いを演じたが、中畑清監督になってからは出番が激減。2013年に戦力外を通告され、2014年からソフトバンクと育成契約を結んだ。
ソフトバンクでは主に3軍で出場していたが、2015年春、主力捕手の相次ぐ故障で急遽支配下選手登録。先発マスクを被ることもあり、チームの日本一にも貢献した。しかし、そのオフに2度目の戦力外となる……。
現役続行を望んだ細山田は、2016年からトヨタ自動車でプレー。同年の都市対抗野球には正捕手で出場し、準々決勝のNTT東東京戦ではサヨナラ打を放つなどチーム初の優勝に大きく貢献した。
ちなみに細山田は大学(早稲田大学)、プロ(ソフトバンク)、社会人(トヨタ自動車)と3つのカテゴリーで日本一を経験したことになる。
プロ野球から社会人野球入りした選手の場合、独立リーグや海外のマイナーリーグで野球を続ける選手と比べ、「プロからの格落ち」というよりは「安定した職場」を選んだ印象を受ける。
そんななか、プロ野球から社会人野球へ移り、再びプロ野球に返り咲いた選手もいる。それが、1992年から西武で9年間プレーした渡邊孝男だ。
渡邊は2000年に西武から戦力外を通告され、2001年から2年間サンワード貿易でプレー。2002年オフに日本ハムに入団し、2004年までプレーを続けた。
ほかに再びプロの門をこじあけた選手には、巨人、広島に所属した後に社会人のリースキン広島を経てヤクルトに入団した宇野雅美、ロッテに所属した後にNOMOベースボールクラブを経て横浜に入団した杉原洋らがいる。
ほかにも矢地健人(中日→ロッテ→新日鐵住金東海REX)、加治前竜一(巨人→三菱重工長崎→三菱日立パワーシステム)、加賀美希昇(横浜・DeNA→JR西日本)ら元プロの選手が社会人野球でプレー。
侍ジャパンのメンバーとして、WBC連覇にも貢献した渡辺俊介も昨年から新日鐵住金かずさマジックで選手兼任コーチとしてチームを支えている。
プロ野球を目指す社会人の選手にとっては、元プロの選手が身近にいることは大きな刺激になるだろう。そして元プロの選手には、舞台は違えども「野球の世界」でファンを魅了するプレーを見せ続けてくれることを期待したい。
文=溝手孝司(みぞて・たかし)
北海道生まれ北海道育ちも、ホークスファン歴約40年。北海道日本ハムファイターズの本拠地がある札幌市在住で広告代理店を営む47歳。