「松坂世代」など一流の選手が集う世代を「◯◯世代」とくくることが多い。週刊野球太郎では、その視点を一歩広げて「野球選手&他競技のアスリート」「野球選手&人気俳優」など、ジャンルを超える形で誰と誰が同級生なのか見ていく。不定期連載「我ら◯◯世代」の第1回は、東京オリンピックでの活躍が期待されるアスリートと野球選手でくくってみた!
1994年度生まれ(1994年4月2日〜1995年4月1日)の世代を「ゆとり世代」と揶揄するなかれ。この一時代からは華のある、天才すぎる新世代がスポーツ界に生まれている。
オリンピックを見れば2つの金メダルを獲得した羽生結弦。フィギュアスケートの世界歴代最高得点を叩き出した氷上の王子だ。また、金銀銅を1つずつ獲得したスピードスケートの高木美帆。金1つ、銀1つ、銅2つを手にした水泳の萩野公介、銅を獲得しさらなる頂点を目指す卓球の丹羽孝希が1994年度世代だ。
プロ野球選手では大谷翔平(エンゼルス)、藤浪晋太郎、大山悠輔、近本光司(ともに阪神)、鈴木誠也、西川龍馬、床田寛樹(ともに広島)、吉川尚輝(巨人)、京田陽太、柳裕也(ともに中日)がいる。
また、その他ほかのジャンルに目を向けると「己の美」をひたすらに追求するMatt(桑田真澄[元巨人ほか]の次男)、ももいろクローバーZのリーダー・百田夏菜子、昭和の大女優感を漂わせる二階堂ふみ、そして秋篠宮文仁親王の第二女子・佳子内親王……。
1994年度世代をゆとり世代と先述したが、彼らが義務教育を過ごした時期は、ゆとり教育への疑問が投げかけられ脱・ゆとり教育が模索されはじめる狭間でもあった。言わば個性を尊重するおおらかな空気と、そこにピリッとした制限をかける機運の狭間で多感な頃を過ごした。
この世代の顔ぶれを見ると過去にとらわれない、もしくは過去にいなかったニュータイプでありながら、きっちりと勝負できる(結果を出せる)仕事人的性格も持ち合わせているように思える。ものすごく前例から自由で個性的でおおらかだけど、個性に溺れて結果を出せなかった……という失敗はしなさそう。
ならば彼らを「我らニュータイプの天才世代」と呼びたくなる。自由の意味を履き違えない彼らは、これからも未開の地を拓いてくれそうだ。
続いては女子ソフトボール界の大エース・上野由岐子の世代(1982年4月2日〜1983年4月1日)を。言わば「我ら大黒柱世代」といったところか。
上野は1982年7月22日生まれの36歳。これまでに北京オリンピック(2008年)で金、アテネオリンピックで銅(2004年)、世界選手権では2つの金に、3つの銀を獲得。女子ソフトボール日本代表の屋台骨を支えてきた。
なかでも名勝負と謳われるのは北京オリンピックの激闘。準決勝と決勝進出決定戦、いずれも延長戦となった2試合を1日で戦い、計318球で完投。翌日のアメリカとの決勝も95球を一人で投いた。この2日間で413球を放った上野の熱投は、「エース」としか呼びようのない勇姿だった。
東京オリンピックの開幕日、上野は38歳の誕生日を迎える。「上野は持つのか?」と心配の声が挙がるなか、本人は「期待は重々承知している」と照準を檜舞台に合わせている。今年4月に打球を受けて、全治3カ月の下顎骨骨折との診断を受けたが、きっと間に合わせるはず。ソフトボールは全競技中トップで試合が始まる。その開幕のマウンドには上野が似合う。
そんな上野に同級生のプロ野球選手もエールを送るだろう。主な現役の顔ぶれを見ていくと、畠山和洋(ヤクルト)、内川聖一、中田賢一(ともにソフトバンク)、中島宏之、亀井善行(ともに巨人)、内海哲也(西武)……。チームを主力として支えてきた面々が並ぶ。
ギリギリの戦いほどいてもらわねば困る大黒柱としてチームを締める内川の元気なプレーが上野の追い風となってほしいし、上野の三度の「熱投五輪」が、ファンがもうひと花咲かせてほしいと願う、畠山、中田、中島、内海にいい影響を与えてほしい。男女、野球とソフトボールの垣根を越え、我らニッポンの野球人。オリンピックのパワーがベテランをまだまだ衰えさせない。
なお、芸能人、俳優に目を向けると一騎当千の味のあるツワモノが並んでいる。ジャニーズ事務所からは相葉雅紀。俳優は小栗旬、瑛太、藤原竜也。女優は真木よう子に深田恭子……そして、筆者が好きだった和田毅(ソフトバンク)夫人・仲根かすみもこの世代だと付記しておきたい。また、アスリートでは吉田沙保里、北島康介の金メダリストがいる。
文=山本貴政(やまもと・たかまさ)