プロ野球選手にとって11月以降の期間は非常に重要な時間となる。翌シーズンの開幕に合わせ、課題を修正し、長所を伸ばすために自分を追い込んでいかねばならないからだ。
多くの球団は11月中旬まで秋季キャンプ行い、その後、選手たちは自主トレ期間に入ることになる。秋季キャンプはベテランや故障中の選手は免除されることもあり、多くは若手中心のメンバー構成だ。しかし、若手メンバーでも秋季キャンプに参加しない選手は存在する。それは世界各国で行われている、ウインターリーグに参加しているからだ。
NPB所属選手が参加することの多いウインターリーグは、中南米やオーストラリア、そして台湾で行われる。かつては筒香嘉智(DeNA)も2015年オフにドミニカ共和国のウインターリーグで武者修行をおこなった。すると、翌2016年に二冠王を獲得など、成果が現れている。
今シーズン、大ブレイクを果たした岡本和真(巨人)も2015年に台湾で行われたウインターリーグに参戦。そこで打率.388、3本塁打、20打点の成績を残し打点王に輝いている。その翌年には吉田正尚(オリックス)が大爆発。当時ルーキーの吉田正は打率.556、6本塁打、29打点と圧倒的な成績を残した。
このように、現在NPBで活躍している選手たちもウインターリーグで自身を磨いた時期があったのだ。
現在、NPB所属の日本人選手が最も多く参加しているのが、台湾で行われるアジア・ウインターリーグ・ベースボールだ。11月半ばからおよそ1カ月にわたってリーグ戦が行われる。毎年、参加チームは異なるが今年はイースタン・リーグ選抜、ウエスタン・リーグ選抜、社会人選抜、KBO選抜(韓国)、CPBL選抜(台湾)の5チームで争われた。
そのなかで好結果を残したのがイースタン・リーグ選抜のヤクルト勢だ。
塩見泰隆が打率.392、4本塁打、12打点、5盗塁。村上宗隆も打率.224、4本塁打、15打点、1盗塁と両新人が好成績。ともに今シーズン、1軍デビューは果たしたが、定着には至っていない。来シーズンはレギュラー争いに加わることが期待されており、その前段階の準備としては上々の結果と言えそうだ。
ヤクルト以外のルーキーでは、安田尚憲(ロッテ)も打率.305、1本塁打、13打点と気を吐いた。安田はコロンビアで行われた「WBSC U-23ワールドカップ」でも大会MVPに選出されている。1年目からオフシーズンも野球三昧だが、結果もしっかりとついてきており、来シーズンは三塁でのポジション争いに期待がかかる。
イースタン・リーグ選抜では塩見、村上そして安田が結果を残した。一方のウエスタン・リーグ選抜は本来イースタン・リーグながら編成上の都合でウエスタン・リーグ選抜として参加したDeNAの選手が躍動した。
そのひとりが宮本秀明だ。宮本は打率.385、2本塁打、6打点と存在感を見せた。来シーズンはソトらと二塁のポジションを争うことが濃厚。今シーズンの本塁打王からレギュラーを奪うことは簡単ではない。ウインターリーグでつかんだものを日本でも発揮したい。
そして、山本祐大も打率.367と結果を残した。今シーズン、初打席初本塁打と「持ってる」ところを見せたが、その後は不祥事もあり厳重注意を受けた。来シーズンはその失態をバットで晴らしたい。
そのほかには高卒ルーキーの高松渡(中日)も打率.303と好成績を残している。中日の二塁手は荒木雅博以来、確固たるレギュラーは不在。高橋周平、亀澤恭平らとの争いに加わりたい。
オーストラリアのウインターリーグ(オーストラリアン・ベースボールリーグ)に参戦している青柳昴樹(DeNA)、平沢大河(ロッテ)は苦戦中。青柳は19試合に出場し打率.170で長打は1本も出てない。平沢も13試合で打率.111と低調な成績だ。
プエルトリコのウインターリーグには真砂勇介、周東佑京(ともにソフトバンク)が参戦している。現在、育成契約である周東は25試合で打率.321と好成績を残している。来シーズン、支配下登録を勝ち取りたい。一方の真砂は打率.185で結果を残すことができていない。
オーストラリア、プエルトリコ組は台湾のリーグと比べるとレベルが上がることもあり、周東を除いて思ったような結果を残すことができていない。しかし、ここでの経験を日本で生かすことはできるはず。来シーズン、ひとまわり大きくなっていることに期待したい。
(※成績は12月21日現在)
文=勝田聡(かつた・さとし)