交流戦も終わり、19日からプロ野球は通常のペナントレースが再開される。オールスターファン投票も20日で終了と、球界は早くも前半戦から後半戦への戦いへシフトしていく。そんな今年の球界事情を考察する上で欠かせないキーワードは「帰ってきた男たち」。まだ途中経過ではあるが「復帰組」の中間決算をしてみよう。
球界の話題を独占した「帰ってきた男」といえば、黒田博樹に尽きるだろう。右足の故障で一時期戦列を離れたが、ここまで11試合に登板しチームトップの6勝(2敗)を挙げている。防御率2.61の安定感はさすがだ。特に交流戦は3戦3勝とパ・リーグの強打者たちを封じてみせた。
広島のもう一人の「帰ってきた男」新井貴浩が、ある意味で“予想外”ともいえる活躍を見せている。昨季まで2億円(推定)をもらっていた男の今季推定年俸は2000万円。その金額からも期待値の低さは明らかだった。かつてチームを捨てた男に対して、ファンの視線も冷たかった。
ところが、外国人選手の相次ぐ負傷と若手メンバーの不調で「カープの4番」の座に帰還すると、“水を得た鯉”のごとくヒットを量産。6月9日に規定打席に到達すると、いきなり打率4位にランクイン。現在は規定打席を再び割ってしまったが、32打点はリーグ6位。貧打カープ打線にあって一人、気を吐いている状態だ。
交流戦終盤に左手の痛みでスタメンから外れたが、リーグ戦では4番復帰が濃厚。このまま好調を維持し、チーム成績が上向いてくれば、年俸のV字回復も夢ではない。
3季ぶりに日本ハムに復帰した田中賢介。ここまで“数字上”は目立った成績を残していないが、見えない功績でパ・リーグ首位を走るチームを牽引し続けている。
開幕時は2番として、現在は3番として役割に応じたチームバッティングを優先。5月29日の中日戦では大野雄大のノーヒットノーランを阻止するチーム初安打をマーク、6月2日の広島戦では最終回の逆転劇を呼び込むべく、先頭打者として四球を選ぶなど、実に“らしい”献身的な働きで貢献している。
西川遥輝、中島卓也、近藤健介、岡大海、淺間大基など10代〜20代前半の若いメンバーがスタメンに名を連ねる日本ハム。日によっては唯一の30代選手として、その経験値とリーダーシップがますます求められるのは間違いない。
アメリカでの屈辱の2年間を経て、3季ぶりに日本球界に復帰した中島裕之。開幕直後は4試合連続安打で期待を抱かせたが、その後は太もも肉離れと腰痛で2度も戦線離脱。森脇浩司監督が責任をとって休養しなければならないほど低迷したチームの「戦犯」の一人に挙げられてもおかしくない状態だ。
だからこそ、中島はここから意地を見せなければならない。6月9日にスタメン復帰すると、そこからの6試合で22打数10安打2本塁打5打点と固め打ち。チームも4連勝中と成績が上向き始めている。ここから、2割8分台にまで上がってきた自身の打率をまず3割台に乗せ、チームの最下位脱出に貢献したい。
帰ってきたのは彼らばかりではない。独立リーグ、ルートインBCリーグの石川ミリオンスターズには、かつてロッテに在籍し、メジャーリーグでも2000本安打を達成したレジェンド、フリオ・フランコが選手兼監督として日本球界に復帰。話題性だけかと思いきや、御年56歳にして67打数19安打、打率.284(6月17日時点)という成績を残している。
また、今月からは同じくBCリーグの富山GRNサンダーバーズに近鉄、巨人で活躍したタフィ・ローズが電撃復帰。こちらも18打数5安打の打率.278(6月17日時点)。しかも本塁打2本と、46歳にしてなお、そのパワーを見せつけている。
そして独立リーグ、四国アイランドリーグplusで日本球界を果たすのが元阪神の藤川球児だ。故郷である高知県を本拠地とする高知ファイティングドッグスに入団。明日、6月20日の試合で、初登板を披露する。
かつてこれほどまで「復帰」が話題になった年はない。そして本来、象徴として語らなければならないはずの松坂大輔(ソフトバンク)は今なお1軍登板はなく、それどころか2軍戦でもまともに投げられない状態が続く。果たして今季、1軍で背番号18の勇姿を見ることはできるのか? リーグ戦再開とともにその動向を見守っていきたい。