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センバツベストバウト!!〜2000年代〜延長、延長に次ぐ延長戦!

 ついに開幕した第86回選抜高等学校野球大会。“センバツ”の歴史を紐解き、味わい深いエピソードの数々を紹介するこのコーナーでは前回に引き続き、“名勝負”にクローズアップします。過去のセンバツ大会のなかから、後世に語り継がれる名試合を、その名も「センバツベストバウト」と題して、独断と偏見で決定したランキング形式でお伝えいたします。

 今週は2000年代の試合のなかから厳選された名勝負とそのエピソードをご堪能ください!


2013(平成25)年・第85回大会/2回戦 済美高4-3広陵高校
――両投手合わせて451球! 安樂もスゴイが下石もスゴかった!

 まずは昨年の名勝負から。大会5日目第1試合は、済美高と広陵高が激突する好カードとなった。中盤まで互角の試合展開も、6回裏に安樂智大のタイムリーなどで済美高が3点を先制。一方の広陵高は土壇場の9回表に3点をもぎとり、同点に追いつく。延長戦に入った13回裏、済美高・金子昂平の一塁強襲の内野安打で、サヨナラ勝ちを決めた。

 この試合、いや第85回大会全体で注目を集めたのが安樂の投球数だ。この試合で13回完投で232球を投げる。この試合以降も先発完投を続ける安樂の投球数が大いに注目を集め、喧々諤々(けんけんがくがく)したのは記憶に新しい。

 だが安樂だけでなく、この試合で敗戦投手となった広陵高のエース・下石涼太も、もっと称賛されてよかったはず。延長13回を1人で投げ抜き、219球も投げたのだから、「スゴイ」のひと言に尽きる。

2009(平成21)年・第81回大会/決勝戦 清峰高1-0花巻東高
――プロ野球でも実現してほしい菊池雄星と今村猛の投げ合い!

 「あれからもう5年も経ったのか…」と感慨深いのがこの試合。清峰高の今村猛(現広島)と花巻東の菊池雄星(現西武)ともに粘り強い投球をみせて、両者一歩も譲らず、見ごたえのある投手戦を繰り広げた。

 試合が動いたのは7回。菊池は2死から四球を与え、清峰高の9番・橋本洋俊に中越え二塁打を浴び、先取点を許す。対する今村は8回、花巻東高打線に3連打を浴びてこの試合初めて三塁への進塁を許したが、自慢のストレートで後続を断ち、得点を与えなかった。

 決勝戦で1-0とはシビれる展開。清峰高は初出場した第78回大会(2006年)で、決勝に進んだが、その試合で横浜高に決勝戦の最多失点記録となる0-21という屈辱の敗戦。それだけにこの勝利は、過去のリベンジを果たしたといえるだろう。

 ご存知のとおり、今村も菊池もプロ野球に進み、それぞれの道を歩んでいる。1年目から一軍で活躍した今村と、数年かかって昨季から大器の片りんを見せ始めた菊池。2人がプロのマウンドで投げ合うのは、交流戦か日本シリーズか。高校野球ファンもプロ野球ファンも、実現を願っている。

2004(平成16)年・第76回大会/準々決勝戦 済美高7-6東北高
――ダルビッシュとメガネッシュと魔法の合いことば

 これもまた、センバツ史に残る試合といってよいだろう。東北高の先発は1回戦の熊本工高戦でノーヒットノーランを達成したダルビッシュ有(現レンジャーズ)ではなく、2回戦の大阪桐蔭高戦で、そのダルビッシュを好救援した真壁賢守だった。

 東北高は初回に3番・大沼尚平の3ランなどで試合を優位に進め、6-2と東北4点リードで迎えた9回裏。ここでドラマが起こる。

 済美高打線が真壁に襲い掛かり、連打で2点差に。そして、2死一、二塁で3番の高橋勇丞が打席に。ここでなんとも劇的なサヨナラ3ランホームラン!

 済美高の学園歌にある『「やれば出来る」は魔法の合いことば』のように済美高ナインはサヨナラ勝ちの奇跡を起こしたのだった。

 スタンドに吸い込まれる、そのサヨナラホームランを見送ったのは、レフトを守っていたダルビッシュ。まさかの被弾に号泣する真壁を、ダルビッシュが優しくなぐさめるシーンも印象的だった。

 ちなみに真壁は、ダルビッシュとの二本柱での活躍により「メガネッシュ」や「マカベッシュ」と呼ばれ親しまれた。東北高を卒業後、東北福祉大へ進学し、その後は社会人野球の名門であるHondaに入社。2011年に現役を引退している。

2003(平成15)年・第75回大会
 準々決勝 東洋大姫路高2-2花咲徳栄高(延長15回引き分け)
 再試合 東洋大姫路高6-5花咲徳栄高
――劇的な幕切れ! ベトナム国籍エースが“奮投”

 引き分けた1試合目も素晴らしく、再試合もまた劇的だった。
 まずは1試合目のほうから振り返ろう。東洋大姫路高の先発は、在日ベトナム人として話題を集めたグエン・トラン・フォク・アン。対する花咲徳栄高はエース・福本真史が先発。両チームともに無得点のまま延長戦へ突入。

 10回表に花咲徳栄高が待望の先取点を挙げれば、その裏に東洋大姫路高が追いつく。さらに延長15回、花咲徳栄高が相手エラーで1点を奪うも、その裏、東洋大姫路高も2死三塁から内野ゴロエラーで同点。2-2で引き分けとなり、再試合が決定した。

 続く再試合は、前日に東洋大姫路高・アン、花咲徳栄高・福本ともに200球以上を投げていたため、先発は回避せざるを得なかった。それもあってか、この試合は点の奪い合うシーソーゲームとなった。初回に花咲徳栄高が2点を先制してから、中盤に東洋大姫路高が逆転、7回表に花咲徳栄高が再逆転、7回裏に東洋大姫路が再々逆転。そして土壇場の9回表に花咲徳栄高が同点に追いつき、史上初の「引き分け再試合も延長戦」という試合となった。

 10回裏に決着がつく。無死から三塁打を打たれたのは、9回から登板した花咲徳栄高・福本。満塁策をとったが、最後はワイルドピッチで、東洋大姫路高が勝利した。うずくまって号泣する福本を、花咲徳栄高ナインが抱きかかえて整列するシーンは、多くの高校野球ファンの胸に刻まれているはずだ。

2006(平成18)年・第78回大会
 2回戦 早稲田実業7-7関西高(延長15回引き分け)
 再試合 早稲田実業4-3関西高
――もはや“マンガ”の世界! やはり1位はこの試合!

 この試合をおいて、2000年代のセンバツ高校野球は語ることはできないだろう。雨の中で始まった1試合目は早稲田実業・斎藤佑樹(現日本ハム)と関西高・中村将貴が先発。この試合のハイライトは、早実3点リードで迎えた9回裏。関西高は無死満塁と斎藤を攻め、4番・安井一平の走者一掃となる三塁打で同点に追いつく。満塁策をとり絶体絶命の斎藤。しかし、ピッチャーゴロ併殺、そして三振と、神懸かり的な投球でサヨナラのピンチを脱した。結局、7-7で引き分けた。

 続く再試合もドラマチックだった。
 3回から登板した斎藤は明らかに疲労感が残る様子だった。5回表には自らホームランを放ったものの、8回裏に関西高・下田将太に2ランホームランを打たれ、逆転されてしまう。

 1点を追いかける形で迎えた9回表。早実は、1死から出塁したランナーを置き、船橋悠がライト前ヒット。その打球を関西の右翼手・熊代剛がまさかの後逸。ランナーに続き、打った船橋もホームインして、なんと早実が逆転。9回裏、関西は2死満塁と斎藤を苦しめるも、最後は安井がキャッチャーフライを打ち上げゲームセット。2日間に渡る死闘は終わった。

(夏の甲子園の写真です)

 疲労困憊で本塁打を打った斎藤は、漫画「キャプテン」で満身創痍の身体で本塁打を放ったイガラシを、ライト前ヒットを後逸した熊代は、「ドカベン」で里中のけん制を外野で後逸した山岡を、それぞれ思い出させた。さらに再試合の終了直後、甲子園にサイレンが響くなか、季節外れの雪が舞い散る……。

 と、もはやこの試合は「マンガかよ!」とツッコミを入れたくなる出来事が次々と起きた。2000年代のセンバツベストバウト1位は独断と偏見で、この試合だ。

 2週に渡ってお送りした「センバツベストバウト」。あなたの思い出の名勝負はランクインしていましたか? 現在行われている大会も、後世に語り継がれる名勝負が生まれることを、期待しましょう!


■ライター・プロフィール
鈴木雷人(すずき・らいと)/会社勤めの傍ら、大好きな野球を中心とした雑食系物書きとして活動中。“ファン目線を大切に”をモットーに、プロアマ問わず野球を追いかけている。Twitterは@suzukiwrite

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