8/6〜8/9までのホームランを一挙紹介!「高校野球100年」の大会はライト方向へのホームランに注目!
野球の華といえば、大きな放物線を描くホームランだ。特に高校球児にとっては、なかなか打つことは難しく、もしも甲子園球場で打つことができたら、一生の思い出になるだろう。
そんな甲子園で飛び出した一本ごとのホームランを紹介していく「第97回 夏の甲子園大会 今週のホームラン!」のコーナー。1週目の開演です!
……と幸先良くスタートしたかったものの、第2日までで出たホームランは、開幕戦の3回裏に鎌仲純平(北海)の1本のみ(その後、第3日に1本、第4日に2本と増えてひと安心)。2日で1本、こんなペースで大丈夫か? ということで、まずは過去の夏の甲子園でどれくらいホームランが打たれたのか、甲子園とホームランの秘密などをまとめたい。
☆2日で1本というペースは少ないの?
例年はどのくらいのホームランが出ているのだろうか。2010年以降の甲子園の本塁打数を調べてみた。今回は、1日で3、4試合行う3回戦までと、1日の試合数が減る準々決勝以降を区分けした。
◎2010年
3回戦まで 24本(11日間)
準々決勝以降 2本(4日間)
合計26本(48試合)
◎2011年
3回戦まで 21本(10日間)
準々決勝以降 6本(5日間)
合計27本(48試合)
◎2012年
3回戦まで 46本(11日間)
準々決勝以降 10本(4日間)
合計56本(48試合)
◎2013年
3回戦まで 35本(11日間)
準々決勝以降 2本(3日間)
合計37本(48試合)
◎2014年
3回戦まで 25本(11日間)
準々決勝以降 11本(3日間)
合計36本(48試合)
2012年は1試合1本以上記録し、全体的にホームランが多く、例外的な年だった。それ以外の年では、3回戦までは1日2、3本のホームランが出ているのが普通だといえる。それを踏まえると、今大会の2日間で1本はやはり少ない。
ちなみに、1995年以降のここ20年において、1大会平均ホームラン数は32.85本、直近10年に絞ると38.2本。最もホームランが出たのは2006年で60本、最少は2003年と1995年の13本となっている。ホームラン数最少の大会では、4試合に1本のペースでホームランが出ていたことになる。
今大会は第4日終了時で15試合を消化し、ホームランは5本で、3試合に1本のペースまで持ち直した。ホームラン数の最少記録は何とか免れそうだ。
☆甲子園球場とホームラン
甲子園球場はホームランが出にくい、球場が広い、と言われることが多い。しかし、両翼95メートルは12球団の本拠地で比較すると、横浜スタジアムに次いで2番目に短く、中堅118メートルは横浜スタジアムと並んで最短だ。
ただし右中間、左中間の118メートルは12球団の本拠地で最も広い。今季からヤフオクドームにホームランテラスが作られたため、甲子園球場が単独トップになった。このようにフィールドが設計されたのは、野球以外にサッカーやアメリカンフットボールなどの競技にも対応するためと言われている。
2つ目の理由は「浜風」の影響だ。「六甲颪」とは反対の、海から六甲山に向かって吹く海風は、ライトからホーム、もしくはレフト側に向かう風になるので、高く上がった打球は押し戻されやすい。どちらかと言うと、レフト側の打球は伸びることもあるので、夏の甲子園では右打者が引っ張るホームランが多くなる。また、甲子園のライト方向にホームランを打てる高校生は、ワンランク上の選手だ、といえる。
「浜風」はホームランを減らすが、ホームランを誘発する甲子園特有の風もある。甲子園球場には内野席と外野席の間に隙間(アルプススタンドからの出入りに使われる)があり、そこが風の通り道となって、ポール際の打球が伸びやすい。プロでも高校野球でも、外野手は捕れそうな追い方をしていたフライが、風に流され、ポール際のスタンドに入るという光景はよく見かける。
こうした左中間、右中間の深さ、特徴的な「浜風」などの要因からホームラン数は少なく、実際にパークファクターなどの数字でも、甲子園球場のホームランの少なさは実証されている。ただし、今大会での第2号、第3号ホームランのように、レフトポール付近は甲子園のホームラン多発ゾーンもある。
この考察をもとに、ただ「本塁打を打った」だけでなく、どの方向へのホームランだったかで、その選手の隠れたスゴさや、甲子園の風を感じてほしい。
☆今週のホームラン!
◎第1号
鎌仲純平(北海/左打者)
1−4 → 3−4【2ラン】
低めのストレート
右中間最深部
バースデーアーチ。風に負けない低めの弾道でスタンドまで運んだ素晴らしい一発。『野球太郎』にも掲載している愛すべき怪童の1人。
◎第2号
林中勇輝(敦賀気比/右打者)
0−3 → 1−3【ソロ】
高めのスライダー
左翼ポール直撃
平沼の好投に応え、チームを逆転勝ちへ導いた一歩目となる一発。
◎第3号
加藤隆舗(白樺学園/右打者)
1−3 → 3−3【2ラン】
インコースに入ってくるスライダー
左翼ポール際
打った瞬間ガッツポーズ! 切れることなく、ぐんぐん伸びていった同点ホームラン。4番の一振り。
◎第4号
山本龍河(智辯和歌山/左打者)
2−9 → 4−9【2ラン】
外角ストレート
右中間少しセンター寄り
ドラフトでも注目される。外角のストレートを豪快なスイングでスタンドまで運んだ。
◎第5号
平沢大河(仙台育英/左打者)
0−0 → 2−0【2ラン】
ボール気味の低めストレート
バックスクリーン右
ボール気味の低さをすくい上げる。風を物ともせず、飛距離十分な一発。
次回は大会6日目から12日目の準々決勝までに飛び出た本塁打を検証する予定だ。
(文=編集部)
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