4位広島までもが猛追し、ますます混迷を極める今年のセ・リーグペナントレース。だが、過去にも似たようなシーズンを我々野球ファンは経験している。23年前、1992年のセ・リーグだ。1992年と2015年、その驚きの相似性をチェックしてみよう。
まずは、1992年の最終順位を振り返ってみよう。
1位 ヤクルト 69勝 61敗 1分 勝率.531
2位 阪 神 67勝 63敗 2分 勝率.515(2差)
2位 読 売 67勝 63敗 0分 勝率.515(2差)
4位 広 島 66勝 64敗 0分 勝率.508(3差)
5位 横浜大洋 61勝 69敗 0分 勝率.469(8差)
6位 中 日 60勝 70敗 0分 勝率.462(9差)
そしてこちらが、9月15日終了時点での今季セ・リーグ順位表だ。
1位 ヤクルト 66勝 60敗 2分 勝率.524
2位 阪 神 66勝 61敗 2分 勝率.520(0.5差)
2位 読 売 66勝 63敗 1分 勝率.512(1.5差)
4位 広 島 62勝 62敗 3分 勝率.500(3差)
5位 DeNA 57勝 72敗 1分 勝率.442(10.5差)
6位 中 日 56勝 72敗 4分 勝率.435(11差)
並びもゲーム差も、92年と今季が近しいことがおわかりいただけるだろう。
1992年は9ゲーム差の中に6球団全てが入るという稀に見る団子状態。4位広島でも首位とわずか3ゲーム差という僅差だった。もし当時CS制度があれば、最後の最後まで異常な盛り上がりを見せたのは間違いない。
同様に今季も首位から6位まで11ゲーム差。ちなみに今季のパ・リーグで見比べると、首位ソフトバンクから最下位楽天までは33ゲーム差(9月14日終了時点)。比べれば、セ・リーグの混戦模様がより浮き彫りになるはずだ。
9月12日に行われた広島対阪神戦(甲子園)の延長12回、広島・田中広輔の左中間へのホームラン性の当たりは、「フェンスを越えていない」として三塁打と判定された。だが後日、NPBが「ホームランだった」と誤審と認め、物議を醸している。現在4位とはいえ、CS進出はもちろん、奇跡の逆転優勝の可能性もある広島ファンにしてみれば、シーズン終盤のこの時期にあってはならない「幻のホームラン」となった。
このニュースを見て、特に阪神ファンであれば23年前のあの出来事を思い出したのではないだろうか。
1992年9月11日、阪神対ヤクルトの首位攻防戦、その9回裏に事件は起きた。阪神・八木裕が放った打球は甲子園の左中間スタンドへ。平光清二塁塁審も右手を頭上でグルグルと回し、阪神がヤクルトに代わって首位に立つ「サヨナラホームラン」になるはずだった。
ところが、ヤクルト・野村監督が「フェンスに当たって中に入った。エンタイトルツーベースだ」と抗議。審判団がこれを認め、八木の打球は「幻のホームラン」となったのだ。
もちろん阪神側は納得せず、試合は37分間中断。激しいブーイングの中で再開された試合は結局、延長15回引き分け。試合時間6時間26分はプロ野球新記録というオマケつきだった。
今回は逆の立場で命拾いをすることになった阪神。ペナントレースが終わって、この一打はどんな意味をもたらすことになるのだろうか?
1992年の優勝戦線は結局、ヤクルト対阪神の最終2連戦で阪神が連勝すればプレーオフに、という展開にまでもつれにもつれた。そしてその一戦目、10月10日の試合でヤクルトが勝利を収め、14年ぶりのリーグ優勝を成し遂げたのだ。
この優勝以降、ヤクルトは野村監督が退任する98年までに4度セ・リーグを制し、うち3度日本一に輝く「黄金時代」が到来した。
一方、優勝を逃した阪神は、1987年のBクラス転落以降続いていた低迷期に逆戻り。結局、1987年から2002年までの16年間で、2位だった92年以外は全てB クラス。内訳は4位が2回、5位が2回、そして最下位が10回という「阪神暗黒時代」を形成してしまう。だからこそ阪神ファンはいまだに、「あの八木の打球がホームランになっていれば優勝していたはず。暗黒時代も終わっていたはず」と悔しがるのだ。
さて、話を2015年に戻そう。まだまだ予断を許さないとはいえ、もしヤクルトが優勝を飾れば、2001年以来「14年ぶりのリーグ優勝」となる。これもまた、1992年の優勝と同じだ。
果たして、歴史は繰り返されるのか? それとも、「幻のホームラン」を今度は味方につけた阪神が捲土重来を果たすのか? もちろん、巨人と広島にもまだまだ可能性はある。今年のセ・リーグは最後の最後まで目が離せそうにない。
文=オグマナオト