“混戦のセ・リーグ、熱戦のパ・リーグ”を地で行くようなつばせり合いが演じられている今季のプロ野球。CSが始まって以来、類を見ないほど激しいAクラス入りを巡る攻防が繰り広げられている。生き残るのはどのチームか。今回は両リーグにおけるCS進出へ向けたサバイバルゲームの展望を占いたい。
まずセ・リーグは巨人、DeNA、広島に加えて4位の阪神までがCS進出可能圏内と見る。例年勝率5割が足切りのラインになることが多いことから、借金10の5位・中日は苦しいだろう。
首位を走る巨人は7月中旬から8月上旬にかけて調子を落とし、反対に調子を上げてきたDeNAと広島が肉薄。“逆メークドラマ”を食らうと誰もが思ったのも束の間、再び上昇気流に乗せて引き離し、DeNAが追いすがるものの優勝に向けて首位をキープしている。
不調をかこっていた菅野智之も気がつけば11勝5敗と6つの貯金を作っている。坂本勇人も9月に入ってイマイチとはいえ、ここまでの貢献度は計りしれない。巨人優勢は揺るがなさそうだ。
2位以降は、2位のDeNAに対して3位の広島が3ゲーム差、4位の阪神が5.5ゲーム差となっている。これだけ見るとDeNAのAクラス入りは安泰に思えるが、残り試合の対戦相手を見ると意外とそうとは言い切れない。
今季のDeNAは阪神に苦戦しており、ここまでの対戦成績が7勝13敗1分と大きく負け越し。シーズン序盤には7連敗を喫している。4試合を残す阪神戦の結果いかんではガタッとくるかもしれない。
しかも五分で渡り合ってきた巨人とはこれから6試合を戦わなければならない。CS出場を確実なものにするには、6試合を残すお得意様の中日からしっかりと白星をつかむ必要がある。
面白いのは広島で、残り試合のほとんどが相性のいい巨人、中日、ヤクルトで占められている。この相性のよさを生かして、DeNAを抜き去るかもしれない。
パ・リーグはソフトバンクが優勝しそうな勢いだったが、西武の猛烈な追い上げによって優勝争いまで混沌としてきた。例年ならソフトバンクの独壇場となっている西武との直接対決で、ソフトバンクの12勝11敗とほぼ五分の結果になっているのがその要因だろう。
そうなるとどこで差が出るのか。まず今季のソフトバンクはロッテとの試合がポイント。6勝15敗と大きく負け越しているだけに、9月6日から9日のロッテとの4連戦をうまく乗り切らなければならない。
その後は相性のいい日本ハム戦とオリックス戦が5試合ずつ組まれているので、いかにロッテをヤフオクドームで返り討ちにするかがカギとなる。
ソフトバンクとは対照的に、西武は日程に足を引っ張られそうな予感。というのも7勝10敗と鬼門になっている楽天戦を、9月だけで8試合も残しているからだ。古巣にキツい恩返しをする浅村栄斗(楽天)を何度見たことか……。
ただ、カモにしているロッテとオリックスの試合は合わせて6試合を残している。土壇場まできたら相性など気にしてはいられないが、対戦相手がどうであれ山賊打線が相手の気持ちを折りまくるように打ち続けない限り、優勝争いは、やや不利な印象は否めない。
3位・楽天と4位・ロッテのAクラス争いを見ると、直接対決ではロッテが13勝9敗2分とリードしている。だが、この両チームも日程が明暗を分けそうだ。じつのところ9月におけるこの2チームの直接対決は9月19日の1試合だけ。もし、それまでの過程で楽天にゲーム差をつけられてしまうと、ロッテの逆転Aクラス入りの芽は急速にしぼみそうだ。
タカとワシを養分にしてきたロッテとしては、まず6日からのソフトバンク4連戦を死にものぐるいで戦わなければならない。CS挑戦権を得られるかはその結果次第だ。
一方、楽天は得意の西武戦が残り試合の大半をしめており、2位浮上も狙うことができる。西武を抜き去ればCS本戦における好影響もこれ以上ないものとなるので、9月で一番目が離せないチームは楽天かもしれない。
「じつはもうCS争いの決着って着いているんじゃないの?」と思うファンが多いかもしれない。もちろんここで述べた相性、日程のさじ加減でドラマが決着するほど、プロ野球は簡単ではない。そのなかで、「野球は筋書きのないドラマである」ということをあらためて知るためにも、優勝、あるいはCS進出を目指して苦手をカモにするくらいの気迫で戦う選手たちを見たい。
文=森田真悟(もりた・しんご)