毎年のように、ニュースターが誕生する。これもプロ野球界の醍醐味のひとつだ。昨年も1軍での登板も数える程度だった若松駿太(中日)がプロ初勝利から、いきなり10勝をマーク。また、かつてはソフトバンクで燻っていた立岡宗一郎(巨人)、亀澤恭平(中日)が揃ってレギュラーを獲得。一流プレーヤーへの階段を昇り始めた。
果たして、彼らに続く存在は2016年シーズンに現れるのだろうか。それを探るべく「今季必ずブレイクする選手」を挙げたい。コーナー名の「厳選ポイント」に相応しく、5人の若手投手に絞って紹介しよう。
「来年は二木がやりますよ!」
声の主は落合英二ピッチングコーチ。昨年オフ、現役時代を過ごした名古屋のラジオ番組へ出演した際に、背番号64のブレイクを断言。鹿児島情報高時代から知る人ぞ知る存在だった二木は、“落合コーチの秘蔵っ子”と称しても良いのではないか。
2年目の昨季はファームの先発陣に加わると、規定投球回へ到達。94回で与えた四球を23個(与四球率2.20)に抑え、制球力の高さをアピールした。すると、10月5日の日本ハム戦で1軍初登板初先発に抜擢。5回を1失点にまとめ、堂々たるピッチングを見せた。
一方、オフに参加した募金活動では、知名度の低さから思ったほどの成果がなく「二木じゃまだ集まらない」と悔しい思いをした模様。今季は「二木だからこそ集まる!」と思わせたい。
満を持して、栄光の41番を今季から背負うのが誠(本名・相内誠)だ。本当は入団と同時に着けるはずだったが、自らの不祥事により剥奪の憂き目に遭った。それでもプロの世界で揉まれ、成長を遂げ、自分の力で取り戻した。
昨季は1軍での登板こそなかったものの、ファームではリーグ最多の12勝をマーク。142回1/3もリーグ最多で、チームから大きな期待をかけられていることがわかる。
41番といえば、黄金期のエース・渡辺久信(現シニアディレクター)の代名詞。長身細身の体型に加え、やんちゃな雰囲気を漂わせるところは先代ゆずりだ。本人も」渡辺SDみたいなエースになれるように」と闘志を燃やす。
1年目は開幕カードで先発デビューを果たすも、白星はわずか3勝と伸びず。ドラフト1位の大卒左腕としては、やや期待はずれの成績に終わった。
ただ、シーズン最後の登板となった9月27日の日本ハム戦ではプロ最長の7回を投げ、1失点の好投を披露。打線とかみ合わず黒星を喫したものの、エース・大谷翔平との息詰まる投げ合いはファンを引きつけた。
オフはプエルトリコへ渡り、ウインターリーグに参戦。7試合で3勝、防御率1.69の好成績をマークした。特に、右打者への内角攻めに手応えを感じたという。現状、チームで1年間先発を張れる投手は金子千尋、西勇輝、東明大貴、ディクソンと名前が挙がるも、全員が右腕。なおかつ先発候補のサウスポーといっても他には松葉貴大しかいない。貴重な存在として、山崎には期待がかかる。
育成契約から這い上がってきたシンデレラボーイ。昨季は6月に支配下登録されると、そのまま1軍の先発ローテーションに定着。チームでは三浦大輔以来となる、高卒2年目でのシーズン3勝をマークした。
周囲の期待も大きく、今季からは背番号「47」に変更。言わずと知れたサウスポーの代名詞的ナンバーで、砂田が憧れる工藤公康(現ソフトバンク監督)も在籍時に背負っている。
1990年代のチームを支えた野村弘樹以降、これといった左腕エースは現れていない。砂田は新指揮官の下でも堂々たるマウンドさばきを見せつけ、エースの階段を登り始める。
塹江(ほりえ)という珍しい名字の持ち主は、香川の進学校・高松北高出身で、最速150キロを誇る剛腕サウスポー。文武両道を地で行く背番号36が広島の秘密兵器だ。
ルーキーイヤーの昨季、インパクトを残したのは6月に行われたユニバーシアードに出場する大学日本代表との壮行試合。NPB選抜の一員で出場した塹江は、?山俊(明治大→阪神)と吉田正尚(青山学院大→オリックス)らを力で押し込み、1回を3人で抑える好投を見せた。
スリークオーターから投げ込むストレートを文字で表現すると「ビューン!」。まるでロケットのような球筋である。
制球力や変化球の精度にやや難があるため、最初は短いイニングでの起用も考えられる。それでも、エース・前田健太はメジャー移籍が決定し、現役続行を示した黒田博樹に多くを望むのは酷だ。塹江のような新たな戦力が先発陣に加われば、チームに追い風が吹くかもしれない。
文=加賀一輝(かが・いっき)