遂に開幕したプロ野球。選手移籍やコンバートが盛んだったこのオフ、選手会長とは別に新体制のチームをまとめる存在として「キャプテン」「主将」の存在も大きいはずだ。特に今季は「新主将」が多いという特徴もある。各チームのキャプテン事情をおさらいしておこう。
<パ・リーグ>
◎福岡ソフトバンクホークス:内川聖一
小久保裕紀の引退以来、空席となっていたキャプテンに今季から内川聖一が就いた。移籍して4年間の安定した働きは随一で、ここ数年は自然とチームリーダーのような存在になっていた。そこで、形としてもキャプテンになることを勧め、打診したのは横浜で2007年から2009年までの3年間、一緒にプレーしていた工藤公康新監督。打順も4番となり、背負うものが一気に増えるが、そんな重圧もはねのけ、右打者としては史上初の8年連続打率3割超えを達成してほしい。
昨季、パ・リーグの首位打者に輝いた糸井嘉男。球界の顔に成長した男が、今季からチームの顔として、ますます存在感を発揮することになる。キャンプのMVPは誰か? という取材に対して「糸井選手です。毎日遅くまで練習していました」とマジメに答えるなど、天然キャラぶりは主将になってもそのまま。今後の発言や行動次第では、新しい主将像を示してくれるかもしれない。
FAでチームを離れた大引啓次に代わって主将に就任したのは、中継ぎエースとしてチームを支える宮西尚生。投手で主将となったのは宮西が球団初となる。これまで、小笠原道大、田中幸雄、金子誠、稲葉篤紀、田中賢介といった、そうそうたる顔ぶれが任されてきた主将という大役をどう務めあげるのか? 左ヒジの張りで調整不足も懸念されているだけに、その左腕にかかる責任と不安、そして期待は大きいはずだ。
今季が主将2年目になるのが鈴木大地だ。プロ入り3年目、当時24歳で主将となった昨季は全試合に出場し、自己最高打率の.287をマーク。もっとも、チームがBクラスでは自分の成績アップも意味がない。今季からはQVCマリンスタジアムに鈴木の等身大3Dプリントフィギュア「3D大地くん」も登場。集客力にも貢献できる主将となれるかに注目が集まる。
今季4年目の主将を務める栗山巧。2013年、2014年、2015年と毎年、開幕時点での監督が違う西武にあって、ずっと変わらないのが栗山のキャプテンシーだ。今季から打順が2番となり、打線の中ではどんな役割が求められるのか? 毎年、ヒット数に応じて東日本大震災への寄付を行っているだけに、今年も安定したパフォーマンスを期待したい。
「侍ジャパン」でも主将を務め、日本プロ野球選手会でも史上最年少の選手会長を務める嶋基宏。そんな「ザ・キャプテン」が今年、満を持して楽天の新主将に就任した。昨季チームは最下位に低迷、監督も交代した状況において、嶋にかかる負担は捕手としても、主将としてもますます大きいはずだ。
<セ・リーグ>
◎読売ジャイアンツ:坂本勇人
今季から坂本勇人が新主将に就任。26歳での就任は球団の歴史のなかでは戦後最年少だ。昨季まで主将だった阿部慎之助の負担を減らすとともに、新生巨人の象徴としての「若さ」と「勢い」が坂本に求められている。ケガでキャンプ合流が遅れたり、オープン戦を休んだりと調整不足も不安視されたが、今シーズンの第1打席でヒットを放ち、幸先いいスタートを切った。しかし、勝負はこれからだ。この主将という重圧を乗り越えれば、野球人としてもう一皮剥けることができるはずだ。
鳥谷主将体制は今季で4年目となる。鳥谷のように「休まない男」こそ、やはり主将にふさわしい。ただ、このオフはメジャー挑戦を目指しながらも、最終的に阪神残留に落ち着いたという若干の後ろめたさもあるはず。「生涯阪神」を誓ったその言葉をチームメイトに、そしてファンに訴えるためにも、例年以上に強いキャプテンシーが求められるのは間違いない。
昨季まで主将だった石川雄洋に代わって新主将に就任したのは、今季「不動の4番」として打線の中核を期待されている筒香嘉智。責任感が増したことが今のところプラスに働き、開幕3連戦では打率.462、2本塁打、4打点という圧巻の成績を残している。このまま勢いを保ち続けられるのか? 23歳の筒香にとって真価の試されるシーズンとなる。
上述したように、今季は坂本、筒香、内川、糸井、宮西、嶋と6人もの新主将が誕生している。チームが不調の時、ピンチの時こそ求められるキャプテンシー。今季、彼らがどんな言葉や行動でチームを引っ張るのか、大いに期待したい。
(広島、中日、ヤクルトのセ・リーグ3球団は主将制度を採用していない)