プロ野球12球団ファンクラブ全部に入り続けて今年で10年になる。2005年に、酒の席でのほんの思いつきで始めてみたものの、まさか10年も、こんな馬鹿げたことを続けるとは自分でも思わなかった。
子どもの頃からのヤクルトファンなので、10歳の頃からずっとスワローズファンクラブには入会していた。しかし、2004年の特典がどうにもショボくて、「これに5000円を支払うのはいかがなものか?」と感じ、「他球団のファンクラブはどうなんだろう?」と考え、「ならば全球団に入会してみよう!」と、短絡的三段論法で今日に至っている。
酔った上での単なる思いつきではあったものの、実際にやってみるとこれが実に楽しい。各球団の個性が表れた特典グッズの数々は手にしているだけで楽しいし、毎日のように届く会報誌やメルマガを丹念に読んでいると、それまで興味のなかった選手の知られざるエピソードがたくさん書かれてあり、自分の中の「野球熱」、そして「プロ野球愛」が高まってくるのがよくわかった。
さらに、ファンクラブ特典である「無料チケット」を使って、ヤクルト戦以外にも足を運ぶようになり、気がつけば全国の球場に行き、それぞれの本拠地チームのレプリカユニフォームを着て、ビールを呑むという至福の時間を過ごしているうちに10年が経ったのだ。
お気楽な考えでスタートした企みではあったものの、さすがに10年間も続けているといろいろなことが見えてくる。各球団がファンサービスというものをどうとらえているのか、どの程度ファンクラブ運営に力を入れているのか、手に取るように把握できるのだ。
そして、10年かけてつかんだ「真理」がある。それが、「ファンクラブの充実度とペナント順位には相関関係がある」ということだ。紙幅の関係で詳細には触れないけれど、2005年のロッテ、2008年の西武、2009年の巨人、そして2013年の楽天……。日本一に輝いたチームは、その前年辺りから「ファンクラブ改革」を行っている。会費を値下げしたり、特典内容を改善したり、多くの会員を獲得するための方策を実施して、その結果、観客動員も増加し、チーム成績も向上しているのだ。
ファンクラブを改革したからチームが強くなったのか、チームが強いからファンクラブ会員が増えたのか、「コロンブスの卵」のような命題ではあるものの、両者に相関関係があることは間違いない。これが、10年という月日をかけ、70万円弱の私費を投じて、僕がつかんだ「真理」なのである。
もちろん、優良ファンクラブもあれば、「うーん」とうならざるを得ない「問題児」もいる。それが、横浜だった。2005年の全球団入会以来、他球団のファンクラブが年々、進化、向上している中、横浜だけがずっと停滞していた。特典グッズはチープで球場観戦特典はなく、その他のサービスも特筆すべき点がなかった。さらに、会員募集時期、特典到着時期、いずれも12球団でもっとも遅かった。
この間、横浜はチーム成績もずっと低迷していた。と同時に、毎年のように「球団譲渡」の話題がスポーツ新聞紙上をにぎわせていた。球団経営自体が不安定な状態の中で、ファンクラブ運営にまで力を注ぐ余裕がなかったのは当然のことだろう。他球団が、どんどんファンクラブ運営を改善していくのを尻目に、横浜は球団運営の心配をしなければならなかったのだ。
しかし、そんな横浜にもついに光明が差し込むことになる。それが、2011年秋のTBSからDeNAへの球団譲渡だ。
新生・横浜DeNAベイスターズ誕生――。これを契機に長年の間、低迷期を過ごしていたファンクラブが一気に改善されていくことになった。2012年から2014年までの3年間で、横浜ファンクラブは飛躍的な改善を遂げることになる。
次回、その詳細を述べてみたい――。
■ライター・プロフィール
長谷川晶一(はせがわ・しょういち)/1970年生まれ、出版社勤務を経て、2003年にノンフィクションライターに。2005年よりプロ野球12球団のファンクラブすべてに入会する試みを始め、2014年まで10年連続で継続し、『プロ野球12球団ファンクラブ全部に10年間入会してみた! 〜涙と笑いの球界興亡クロニクル〜』(集英社)を上梓した(5月26日発売)。現在、「12球団ファンクラブ評論家」の肩書きで商標出願中。