今後の虎の行末を握る新選手会長・上本博紀
【君はこんなもんじゃない選手名鑑2014】
☆エリート街道を突っ走ったアマ時代
広陵高時代は1年夏から4季連続で甲子園出場、2年春は優勝に大きく貢献。3年次は主将を務め、さらにセンバツでは捕手をこなすといった野球センスの高さを発揮した。
早稲田大に進学すると、1年春からレギュラーとして活躍し、卒業するまで全試合出場、8季で5度の優勝。大学通算109安打に、雨の早慶戦でホームスチールを成功させるなど記録にも記憶にも残るプレーぶりだった。4年秋の最終シーズンは東京六大学リーグ優勝、そして早稲田大、初の明治神宮大会優勝を達成し、主将として大役を終えた。
☆流れにも運にも見放され気味な数年
ドラフト3位で阪神に入団し、即戦力として期待される。首脳陣、評論家の評判は高いが、二遊間の層が厚く、またチャンスがありそうなタイミングで不慮のケガから離脱することが多く、なかなか定着ができなかった。
それもあり、2013年はアメリカ帰りの西岡剛を獲得。夏からはヒザに不安を抱えながらのプレーだったが、十二分に働き、前半戦の貯金を生かし阪神は2位へ。
たしかに、5位から2位へジャンプアップしたものの、このままキープできるとは思えない。2013シーズンのメンバーのまま、新井兄弟や新外国人頼みでは不安要素が多すぎる。加えて、ここ数年のスタメンを見ると、生え抜きの選手が育ってポジションを獲得したケースは、大和くらいだ。投手では藤浪晋太郎、松田遼馬の台頭はあったが、若手が育ちにくい土壌をなんとかする意味でも、リーダーシップを買われて新しく選手会長になった上本がレギュラーを獲得しなくては、今後もかなり不安である。
☆今後の阪神の浮沈を握る
このくらい活躍してくれないと、というラインはまさしく昨年の菊池涼介(広島)がぴったりとくる。菊池以上の盗塁スキル、実戦向きの走塁感覚。超人的な菊池の守備範囲には多少劣るが、ゴールデングラブ賞も期待できる総合的な守備力を備えている。首脳陣はサード・西岡&セカンド・上本という案を出している(西岡自身は簡単にポジションを譲らないと反論している)ように、素質は認めてられるので、しっかりとセカンドのポジションを奪わなくてはならない。さらに、西岡をサードに追いやることで、攻守のバランスがとれた内野陣を形成できるだろう。
攻撃面で考えても、1番から3番まで上本、大和、鳥谷敬とフル出場できれば、それぞれ20盗塁が期待できる選手を並べられるのは、城島健司、金本知憲が抜け、長距離砲が育たず、なかなかマートン以外の外国人もはまらない中で、新しい阪神の売りにすることができる。
また、1番に西岡を置いたまま、アマ時代から意外に勝負強さがある上本を5、6番にしてポイントゲッターの役割を担わせるような「スパイス」の効かせ方もありだろう。さらに、走れる選手を5、6番に置くことで、上本の後ろを打つ長距離打者が生かされるはずだ。
とにもかくにも、今年も新外国人や新井兄弟などでファースト、サード、打順では6、7番を任せているようでは上昇気流が生まれる可能性は低い。上本がスタメンに名前を連ねることで活性化させないと、阪神の暗黒時代を再来させてしまうのではないかと心配になってしまう。
上本が「こんなもんか…」で終わってしまうと阪神も「こんなもんか…」になってしまう。チームの浮沈も握るであろう上本博紀。まだまだこんなもんじゃない。
文=カバディ西山(『野球太郎』編集部)/1985年生まれ、東京都出身。上本とは大学の同学年。
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