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先発6番手とは言わせない! 左腕エース候補に成長した阪神・岩貞祐太が目指すもの


 可能性を秘めた選手が積極起用される! 阪神タイガース・金本知憲監督の思い切りのいい決断が、選手たちを刺激して、チーム内を活性化している。

 4月27日、育成選手だった原口文仁が支配下登録され、同日付けで即1軍登録。山田勝彦2軍バッテリーコーチのユニフォームを借りて、すぐに試合に出場して話題になった。

 積極起用といえば、今季初めて1軍でプレーした野手を追っていくと一目瞭然。高山俊、横田慎太郎、陽川尚将、板山祐太郎と4選手にも及び、ほとんど1軍実績のなかった岡崎太一や北條史也も積極的に起用して、ここまで相応の結果を残している。

 反対に、結果の出ない選手は容赦なくファームに落とすのが今年のタイガース。体調不良もあり調子の出ない新外国人、マット・ヘイグを早々に見切り、ファームで再調整を課している。また、昨年70試合マスクを被った実績のあるベテラン捕手・鶴岡一成が、ここまで1軍に呼ばれることがないのも、今年の象徴とも言える。

岩貞祐太が昨年までなかった安定感を見せる


「岩貞に勝ちをつけてやりたい!」

 毎試合、野手陣はそう思い打席に立っているに違いない。先発6番目の座をゲットし、安定感ある投球をみせている期待のサウスポー・岩貞祐太だ。

 ここまで勝ち星は2つしかないものの、内容としては満足のいくものだろう。4月29日の登板までの5試合を終えて、防御率0.79と昨年までにはない安定感を見せている。

 岩貞は、熊本・必由館高から横浜商科大へ進み、2013年ドラフト1位で入団するも、昨年までの1軍登板では1年1勝止まり、故障等もあってファームとの往復を余儀なくされていた。

 そんな岩貞が結果を残したのが、昨年末の台湾でのウインターリーグだった。5試合に登板して、2勝0敗、17イニングで奪三振27、防御率0.53で、投手部門のMVPを獲得した。


能見篤史から受け継がれたもの


 岩貞がレベルアップした大きな要因に、能見篤史との合同自主トレが挙げられる。台湾遠征前、目標に掲げてきた先輩左腕の能見に、合同自主トレを直訴して実現したのだ。

 能見といえば、ストレートと同じフォームから繰り出されるフォークボールが最大の武器であった。全盛期の2012年には奪三振王に輝いた能見。自らが述べるように、年齢とともに、フォークをストレートの軌道に見せることが難しくなったという。

 若い岩貞が目指すべきところとは、まさにこの部分。岩貞の今季ここまでの奪三振数46(4月30日時点でリーグトップの奪三振数)は、能見の教えがあってこその結果であろう。

 いくら直訴されたとはいえ、チームを強くするために、能見がチーム内競争のライバルでもある岩貞に託したものは大きく、今年の阪神がチーム一丸となって戦っていることを象徴するエピソードでもある。

将来の左のエースとして


 岩貞が生まれ育った故郷・熊本に最初に地震が起こったのは4月14日。その2日後には、より大きなマグニチュード7.3が熊本、大分を襲った。岩貞の家族や親戚も甚大な被害を受けたという。

 地震以後、熊本を故郷にもつアスリートたちの活躍が報道されるなか、岩貞自身も故郷のため、勝ちたい思いでいっぱいであることは言うまでもない。

 ドラフト1位として将来を期待され、3年目にして頭角を現したサウスポーが、能見にかわる将来の左のエースとして成長していくことを期待したい。


文=まろ麻呂
企業コンサルタントに携わった経験を活かし、子供のころから愛してやまない野球を、鋭い視点と深い洞察力で見つめる。「野球をよりわかりやすく、より面白く観るには!」をモットーに、日々書き綴っている。

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