チームに貢献しているのに今ひとつ不遇をかこってしまう選手を取り上げる『頑張れ、◎◎!』シリーズ。これまで鈴木大地(ロッテ)、小林誠司(巨人)を取り上げてきたが、第3弾となる今回は“常勝”カープにおいて、新時代のセンターを担う男・野間峻祥を応援したい。
今季で5年目を迎える野間峻祥。そのキャリアを今一度おさらいしてみたい。
2014年にドラフト外れ1位で広島に入団。入札は有原航平(日本ハム)だった。しかし、緒方孝市監督にとっては就任早々、自身の後継者となる外野手を手に入れた形。自身の若手時代の背番号37を与え、1年目から127試合に出場した。
ただ、1年目の緒方政権は知っての通り、最終戦でCS出場を逃して非難されることもあった。野間も緒方監督の寵愛があったとして、「隙あらば野間」と言われてしまう。ただ、打率.241(170打数41安打)は大卒新人としては、謗りを受けるほどの数字ではない。守備、走塁ではしっかりと仕事をこなした。
しかし、2年目にその煽りを受ける。開幕早々に2軍に降格。2軍で育てる路線に切り替えられてしまった。2016年は1軍でわずか21試合。2017年は98試合に出場したが、85打席で打率.189。守備固めや代走要員としては上出来だったが、強固な外野陣に食い込むことができなかった。
しかし、2018年に入ると状況は一変する。丸佳浩(現巨人)が離脱した際に中堅で起用されると、課題の打撃も一時は打率3割を超えるほどの絶好調。後半戦は1番でも起用され、126試合で打率.286(405打数116安打)を記録した。明らかに作られた隙ではなく、実力で隙を突いてのプチブレイクだった。
そしてオフには丸佳浩がFA移籍。中堅手の第一候補に挙げられたのはもちろん野間だった。
それでも安泰ではない。他球団ならば「1番・中堅」も狙える位置だが、内野で送球難を抱える西川龍馬が外野定位置争いに飛び込んできた上に丸のFA人的補償で長野久義も加入。戦力層の厚い広島ならではの競争がはじまった。
そんななか、野間はオープン戦で打撃不振に陥ってしまう。さらには調整出場のウエスタン・リーグ開幕戦で本塁生還時にベースを踏み忘れるボーンヘッド。緒方監督が激怒し、2軍に懲罰降格させられた。とはいえ、緒方監督も本気で怒っていたわけではないだろう。1軍開幕前にボーンヘッドが出てよかったと内心思っているのではないだろうか。
しかし、3月24日のオープン戦最終戦で2四球2打点、好守を見せ、何とか開幕1軍を掴んだ。そして迎えた開幕戦、野間は「6番・中堅」で初の開幕スタメンを掴んだ。
最終的に開幕スタメンの勝負を分けたのはこれまでに「隙」で築いていた守備の安定感だ。西川も身体能力抜群だが、いきなり中堅を任せるのは不安が残るというのもあるだろう。
それにしても驚いたのは打順だ。昨季も「6番・野間」は決して少なくなかったが、打撃好調の會澤翼でもよかった。やはり少しでも若い打順で足を生かしたいという起用に見える。恐怖の下位打線に繋がる、第二の先頭打者としての役割も求められている。
開幕戦からしぶとく2安打を放った野間だが、どれだけ打撃で安定感を示せるか。従来にはない俊足の6番打者。間違いなく今季の広島打線のキーマンになってくるはずだ。
文=落合初春(おちあい・もとはる)