ペナントレースも折り返し地点を過ぎ、ここからが勝負どころの戦いとなる後半に突入する。前半戦をうまく乗り切った球団も、そうでない球団も、ここから先の勝負に向けて、チームに喝を入れる救世主の存在は不可欠だ。その候補となりそうな選手をピックアップしてみたい。まずはセ・リーグ編だ。
首位独走で前半戦を終えた広島。後半戦もこのままの戦い方ができれば、3年連続リーグ制覇の可能性はかなり高いと見る。それをより確実なものとするには、士気を落とさないことが重要だ。そこで、チームを鼓舞する意味で救世主となりそうなのは赤松真人だろう。
赤松は胃がんの手術のため昨季は全休。しかし、今季は開幕からファームで実戦復帰している。体調を考慮し、途中交代や代走などでの出番が多いものの、オールスター前までで36試合に出場。打率は.189ながら、5月以降に限れば打率.250(28打数7安打)と徐々に感覚を取り戻しつつある。チームメイトからの人望も厚い赤松が、夏場以降、1軍ベンチに戻ってくるようなら、広島のラストスパートに勢いがつくことは間違いない。
ファームで12試合に登板し、7勝2敗、防御率1.43と、圧倒的な成績を残しながら、外国人枠の関係もあって1軍デビューが先延ばしとなっていたヤングマン。
不調のカミネロが6月30日に2軍落ちとなると、入れ替わりとして翌7月1日に初の1軍昇格。同日の先発に起用され、8回3安打無失点で初登板初勝利を記録した。さらに2試合目となった7月9日も、8安打を浴びながら6回2失点と踏ん張って2勝目をマーク。
198センチの長身から投げ下ろす150キロ近いストレートと、大きく割れるカーブが持ち味で、インステップ気味に踏み出して投げ下ろしてくる。しかも、投球テンポがいい。慣れるまでは、各球団とも苦労するのではないか。
先発投手陣の中で、ここまでローテションを守りつつ合格点の数字を残したのは菅野智之(9勝5敗)、山口俊(7勝6敗)のみ。田口麗斗や野上亮磨、畠世周らが不調や故障で苦しんでいるだけに、後半戦でヤングマンの右腕にかかる期待は大きい。
なお、ヤングマンの英字表記は「Youngman」ではなく、「Jungmann」なのでお間違えなきよう。
キャンプからオープン戦にかけて打ちまくり、「韓国球界で打率3割&30本塁打を2年続けた実力は本物だ!」と各所から大絶賛を浴びまくっていたロサリオ。ところが、開幕するとその打棒は影を潜め、打率.230、4本塁打と平凡な数字しか残せず、6月3日には2軍落ちとなってしまった。
ただ、幸いなことにファームでは17試合で打率.333、4本塁打と復調気配を見せている。金本知憲監督は慎重で、後半戦スタートと同時に1軍復帰とはいかなかったが、チームトップの10本塁打を放っていた糸井嘉男が骨折で戦線離脱したこともあり、そう遠くないうちに上に呼ばれるのではないだろうか。
推定年俸3億4000万円の2年契約という、球団最高額で獲得した助っ人だけに、このまま終わらせるわけにはいかない。後半戦での巻き返しを待ちたい。
今季は開幕からリリーフへ配置転換されていた井納翔一。交流戦を前に痛打を浴びることが続き、5月23日には2軍降格となってしまった。しかし、そこで落ち込むことなく汗を流し、7月1日にはノーヒットノーランを達成。その勢いもあって、7月8日に1軍に再昇格し、先発マウンドに上がると、5回2/3を無失点に抑える好投で、先発として今季初勝利を挙げた。
オールスターゲームを挟んでいったん登録抹消となったが、後半戦突入と同時にローテ―ションの一角を任される可能性が高い。有望な若手投手がズラリと揃っていたはずのDeNAだが、今季は離脱者が相次いだ。チームではベテランとなる32歳の井納が、後半戦の救世主となるか。
中日のスタメン捕手は、大野奨太と松井雅人が主に務めているが、打率は、大野が.205、松井雅が.194といまひとつ。この状況を打破すべく、7月7日に桂依央利が今季1軍初昇格となった。ファームでは、打率.306と数字を残している桂が加わることで、大野と松井雅人にも刺激を与えることができるだろう。
前半戦のチーム防御率は4.42でリーグ5位だったが、最下位だったヤクルトの4.43に肉薄している。捕手のポジション争いが、ディフェンス面の強化にもつながるようなら、願ったり叶ったりとなるのだが。
九州学院高時代に通算52本塁打を放ち、2017年のドラフト1位でヤクルトに入団した村上宗隆。まだ18歳のルーキーだが、ファームでは開幕から4番に座り続け、奮闘中だ。
6月は打率.315、6本塁打だけでなくリーグトップの7盗塁とポテンシャルの高さを見せつけ、イースタン・リーグの月間MVPにも選出された。前半戦73試合で打率.287、10本塁打、49打点と高卒1年目としては上々の成績を残している。
ポジションは一塁もこなしているが、プロでは三塁手として勝負していく。三塁では35試合で7失策と、本格的に練習を始めて半年に満たないので、2軍レベルでも学ぶべき部分が多いのは当然。そこは練習と経験を積むことでクリアしていくしかない。
交流戦で最高勝率をマークするなど好調だったのに、リーグ戦が再開すると、そこで稼いだ分をあっという間に使い果たし、最下位に逆戻りしてしまったヤクルト。そういう苦しい状況だからこそ、生きのいい若手を使ってチームを活性化したい。
(※成績は7月16日現在)
文=藤山剣(ふじやま・けん)