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去りゆく飯原誉士、今浪隆博に粋な計らい。ヤクルト対巨人の最終戦は消化試合ではなかった!

去りゆく飯原誉士、今浪隆博に粋な計らい。ヤクルト対巨人の最終戦は消化試合ではなかった!

 ヤクルトは10月3日に行われた巨人戦で全日程を終了。試合終了後に真中満監督がスピーチを行い、日本シリーズ出場球団に比べると、およそ1カ月早いシーズン終了となった。同時に筆者がライフワークにしている神宮球場におけるプロ野球観戦も終わりを迎えた。2016年、2017年と2年連続で皆勤を果たしたことへの満足感はある。

 さて、その最終戦は両チームともに順位が確定していることもあり、いわゆる消化試合と呼ばれてしまってもおかしくないマッチアップだ。しかし、そのなかにも見どころはあり、両チームはファンを楽しませてくれた。

音で魅せた選手への感謝


 ヤクルトでは、真中満監督、伊藤智仁コーチの退任は発表されていたが、選手の去就についての情報は出ていなかった。しかし、最終戦となった10月3日の試合前に11選手(育成含む)に戦力外通告。そのなかには飯原誉士、今浪隆博といった1軍での実績がある選手も含まれていた。今浪は「甲状腺機能低下症 橋本病」を理由に現役引退。一方、飯原は現役続行を希望しており、他球団からのオファーを待つことになることもあってか、両選手ともに引退試合のセレモニーはなかった。

 2人の引退試合、セレモニーがないのは残念だが、球団からは粋な演出があった。スタメン発表前に今浪の出囃子でもある「スターライトパレード」がかかったのだ。場内はざわつき、気づいたファンはSNSへ投稿する。筆者もそのひとりだ。そして、スタメン発表が終わった直後には飯原の出囃子である「AGGRESSIVE」も鳴り響く。また、イニング間には応援団が主導して両選手の応援歌を演奏。音で2人への感謝を送った格好だ。

 さらに、極めつけは巨人・相川亮二への演出だ。相川はこの試合の直前に会見を開き、引退を表明しており、実質上、ビジター戦ではあるものの、引退試合でもあった。9回表に先頭打者として打席に向かう際、流れた曲はヤクルト時代の登場曲である「KATTOBASE」だ。この瞬間は敵も味方もなく球場全体からの「相川コール」が沸き、そして、惜しみない拍手が贈られていた。試合中ではこの日一番の声援と言っても過言ではないだろう。

 こういった粋な演出をほどこすのも、ヤクルトが「ファミリー球団」といわれる理由の1つかもしれない。

若手が躍動した巨人


 チームが不調に陥ると大型補強を行い、他球団ファンのみならず、巨人ファンからも「若手の育成を!」と言われることも多かった巨人。しかし、この日の巨人は「ヤングジャイアンツ」と呼ぶにふさわしい若手選手たちが躍動した。

 最初に結果を出したのは、ドラフト1位ルーキーの吉川尚輝だ。初回にプロ初安打を放つと3打席連続安打の猛打賞をマーク。2回には6番・捕手でスタメンを任された2年目の宇佐見真吾がバックスクリーンへ第4号本塁打。最終戦でも存在感を発揮した。

 今シーズンの宇佐見は、21試合、45打席数と出場機会はまだまだ少ないものの、打率.350(40打数14安打)、4本塁打、8打点の結果を残した。来シーズンは小林誠司と正捕手の座を争うことになりそうだ。

 そして、試合を決めたのも2年目の山本泰寛だった。9回表、1死満塁の場面でヤクルト守護神の秋吉亮からグランドスラム。坂本勇人以外に若手が育っていない、との声をよく聞くがダイヤの原石は多そうだ。

 この試合、若手陣はお試しで起用されているという側面もある。巨人という常勝が義務づけられたチームにおいて、シーズン中はこうも若手を積極起用するわけにはいかないだろう。しかし、この日のように若手を起用できるかがチーム再建の鍵となることは間違いない。このオフに補強も行うだろうが、一野球ファンとしては若手の躍進に期待したい。


 3月31日の開幕戦で最年長の石川雅規が第1球を投じてから始まった2017年のヤクルトのペナントレース。最後はヤクルト希望の星でもある廣岡大志の思い切りのいい空振りで幕を閉じた。中途半端なスイングではなくフルスイングによる空振りは気持ちがいい。これで半年ほど神宮球場とはお別れだ。来年は10月末まで神宮で野球が観戦を楽しめることに期待してみやざきフェニックス・リーグ、ドラフト、アジアウインターベースボールリーグと見守っていきたい。


文=勝田聡(かつた・さとし)

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