《セイバーメトリクスで読み解く日本シリーズ》オフェンス力は対等だ!カギは「走者が溜まっての一発」か?
【この記事の読みどころ】
・リーグ優勝に導いた両チームの攻撃力はCSでも健在!
・CSでは不安要素だったケガ明けの柳田悠岐、バレンティンはともに活躍し、日本シリーズを迎える
・本塁打で得点を効率的に稼いだチームが勝利に近づく!?
☆シーズンの戦力をほぼ維持して決戦へ! 濃密なシリーズの予感
クライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージは、パはソフトバンクが3連勝、セはヤクルトが3勝1敗で、それぞれロッテと巨人を退け、日本シリーズ進出を決めた。
ソフトバンクはチームが得点を生み出すのに、出塁力と長打力両面で最大の貢献を果たしてきた柳田悠岐が出場できるかが注目されたものの全3試合に出場。ただ出場しただけではなく、初戦では貴重なホームランを打つなど、ケガの影響を感じさせない活躍を見せ、ソフトバンクのポストシーズン最大の懸念は払拭された。参考までに3試合の総得点は12点、1試合平均で4点。シーズンと大きく変わらない得点を記録していた。
※今季のソフトバンクの強さについては、こちらの記事「なぜ、ソフトバンクは他球団を置き去りにできたのか?」も合わせてお読みください。
対するヤクルトは4試合で10点、1試合で2.5点と得点はあまり入らなかったが、タイトな試合を続けて勝った。“ジョーカー”的存在として復帰したバレンティンは、本塁打は出ていないが四死球や軽打しての安打などで6度出塁。
ファイナルステージの戦いぶりから考えると、個々の選手の調子の上下動は多少あったとしても、シーズンに両チームが見せた得点力に大きなダメージはなく、日本シリーズの舞台に上がってきそうだ。これからのNPBを引っ張っていくと思われる柳田とヤクルトの山田哲人という2人のスターが、正面から激突する濃密なシリーズが楽しめることだろう。
☆バレンティンが実力発揮すれば得点力は対等か?
ソフトバンクとヤクルトの、そもそもの得点力について改めて整理しておこう。まず両チームともに出塁率はリーグトップ。ソフトバンクは.340(パ・リーグ平均.326の104%)、ヤクルトは.322(セ・リーグ平均.314の102%)と数字上は差があるように見えても、リーグ平均と比較したときの差はあまりない。この数字を支えているのは、何と言ってもセ・パそれぞれの最高出塁率を記録したソフトバンク・柳田(.469)、ヤクルト・山田(.416)だ。
出塁した走者を効率的にホームへ還す長打力を、長打率から打率を引いたISO(Isolated Power)で確認すると、ソフトバンクは.141(パ・リーグ平均.120の117%)でリーグ2位、ヤクルトは.120(セ・リーグ平均.111の108%)で3位。こちらはリーグ平均比を考慮しても差がある。ソフトバンクにやや分があるようだ。
ここにはロングヒッターのレギュラーが柳田悠岐(ISO.269)、李大浩(同.241)、松田宣浩(同.246)と3人そろっているソフトバンクと、山田哲人(同.282)と畠山和洋(同.203)の2人に限られたヤクルト、というところで差が出た。ただ、ヤクルトには“ジョーカー”バレンティンが加わったことで対等になる可能性はある。
広くはない神宮球場と東京ドームに近い大きさとなったヤフオクドームで行われる日本シリーズは、彼らロングヒッターに注目が集まるのは間違いない。ただ、スタンドには放り込みやすいが、一定の外野の守備力を備えたチームが守るのであれば、二塁打を単打に抑えることができ、そもそも三塁打は生まれにくいのが狭い球場ともいえる。“本塁打が生まれやすい=点の取り合い”になるとは限らない。
走者をコンスタントに出すことは前提としても、走者がいる時にいかに本塁打が出るか出ないかで、スコアは大いに変わってくる。また、他球場ではアウトになるようなフライでも、神宮orヤフオクドームではスタンドにギリギリ届いてしまうような“ラッキーな”本塁打が出る可能性もある。運とともに本塁打を重ねることはできるか?
本塁打で得点を効率的に稼いだチームが勝利に近づくのかもしれない。
文=秋山健一郎(あきやま・けんいちろう)
1978年生まれ、東京都出身。編集者。担当書籍に『日本ハムに学ぶ勝てる組織づくりの教科書』(講談社プラスアルファ新書)、『プロ野球を統計学と客観分析で考えるセイバーメトリクスリポート1〜3 』(デルタ、水曜社)など。
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