「野球女子“倍増”プロジェクト」から考える、女性マスコットの未来
毎回、12球団の中からひとつのマスコットにクローズアップするこのコーナー。今回は少し脇に逸れ、球界全体の取り組みとマスコットの関係性について取り上げてみたい。
* * *
「野球女子倍増プロジェクト」始動!
昨年、「カープ女子」が流行語大賞に選ばれるなど、女性ファンの増加が注目されているプロ野球。さらなる女性ファン獲得のため、首都圏に本拠地を置くロッテ、西武、巨人、DeNA、ヤクルトの5球団による共同事業「野球女子“倍増”プロジェクト」の発足記者会見が3月13日、都内で行われた。
球団経営において、女性ファン獲得は至上命題だ。その一方で、プロ野球に興味を持ちながらも「野球のルールがよくわからない」「チケットの買い方がわからない」という女性からの声はまだまだ多い。
そこで同プロジェクトでは、5球団が首都圏近郊に住む女性が、よりプロ野球に親しめる環境づくりを行い、2019年シーズンまでの5年間で、5球団合計のファンクラブ女性会員数を今の2倍となる35万人にすることを目標に活動を続けるという。
このプロジェクトの盛り上げ隊として記者会見に登壇したのが5球団の「女性マスコット」たちだ。
ロッテ「リーンちゃん」、西武「ライナ」、巨人「ビッキー」、DeNA「DB.キララ」の4体が姿を現し、ヤクルトからは当然
「つばみ」が来るかと思いきや、なぜか男である「つば九郎」が登場した。なんでも「はっちゅうみす」だったらしい。
ただ悲しいかな、翌日の各メディアにおいてマスコット名が使われたのは「つば九郎」のみ。ここに女性マスコットの現状、ひいてはマスコット全体の課題が見て取れる。
そもそも、12球団マスコットの女性キャラクター名称を全て覚えている、なんて存在はプロ野球ファンであっても珍しいのではないだろうか。まずは、その名称とキャラクター特性だけでも把握するべく、一度整理してみよう。
巨人……ビッキー[ジャビットファミリーの長女]
阪神……ラッキー[トラッキーの彼女]
広島……女性キャラクターなし
中日……パオロン[シャオロンのつれ(友だち)]
DeNA……DB.キララ[DB.スターマンが片思い中]
ヤクルト……つばみ[つば九郎の妹]
ソフトバック……ハニーホーク[ハリーホークのガールフレンド]
オリックス……バファローベル[バファローブルの妹]
日本ハム……ポリーポラリス[B・Bの妹的存在]
ロッテ……リーンちゃん[マーくんのガールフレンド]
西武……ライナ[レオの妹]
楽天……クラッチーナ[クラッチとの関係性は不明]
▲西武・ライナ
「カープ女子」で一世を風靡し、女性向け施策も充実している広島に女性マスコットがいない、というのがなんとも皮肉だ。
だが、発想の転換をすれば、他の11球団は女性ファン獲得に向けて、未来へのアドバンテージがある、とも言えるのではないだろうか。
「女性ファンの獲得」と聞くと、20代〜30代の女性をイメージしがちだ。もちろん、若い女性ファンの獲得は重要なテーマではあるものの、より劇的にファン層を拡げるためには、母と娘、女性親子(ファミリー層)の獲得が必要になってくるはずなのだ。
そのとき、女性マスコットの存在がグッズ購入のキッカケになり、球場に足を運ぶモチベーションになる可能性は決して小さくない。
だからこそ、まずは名前だけでも広く知れ渡っておく必要があると思う。ひょっとすれば、ハローキティのような存在にだってなれるかもしれないのだから。
「野球女子“倍増”プロジェクト」元年の2015年、女性マスコットたちの活躍にも注目して追いかけていく必要があるだろう。
■ライター・プロフィール
オグマナオト/1977年生まれ、福島県出身。広告会社勤務の後、フリーライターに転身。「エキレビ!」、「AllAbout News Dig」では野球関連本やスポーツ漫画の書評などスポーツネタを中心に執筆中。『木田優夫のプロ野球選手迷鑑』(新紀元社)では構成を、『漫画・うんちくプロ野球』(メディアファクトリー新書)では監修とコラム執筆を担当している。近著に『福島のおきて』(泰文堂)。Twitterアカウントは@oguman1977(https://twitter.com/oguman1977)
記事タグ
この記事が気に入ったら
お願いします