華々しいプロ野球の世界。グラウンドでのプレーヤーはもちろんだが、「野球関連」の仕事でプロ野球を支える人たちもいる。近年、脚光を浴びる「野球のお仕事」を紹介したい。
野球のユニホームにしっくりくる修飾語といえば、やはり「泥だらけ」だ。球児のお母さん方は、野球界では知らぬ者がいない「ウタマロ石鹸」を使い、ゴシゴシと汚れを落としているという。それでも汚れは落としきれるものではない。ユニホームを新調する時期は別として、野球のユニホームは徐々に汚れが目立ってくる。
しかし、プロ野球に目を移すと、選手たちのユニホームはいつもピカピカだ。
そこにはプロの技がある。各球団が委託契約を結んだクリーニング専門業者が夜通し作業。「クリーニング士」の資格を持つ職人たちの技はメディアでもたびたびクローズアップされており、たとえば、神宮球場の土は赤色の染料を含んでいるなど、通常では知らないような球場の特性まで把握しているという。
余談だが、雨天中止の際に豪快に泥まみれヘッドスライディングをしてファンを楽しませる選手を見て、どう思っているのだろうか……。ちょっぴり聞いてみたいところだ。
ヤフオクドームの名物になっている「勝利の花火」。昨季はソフトバンクが福岡移転後では過去最多の48勝を挙げ、幾度もの大輪を咲かせた。
この花火の打ち上げももちろんプロの技。西日本花火の花火師の方がドームの天井中央付近に待機。空調も届かない中、勝利の瞬間を待っている。昨年からスポーツ新聞などで取り上げられることが増えているが、ぜひともドキュメンタリーでスイッチオンの瞬間を見てみたい。
ちなみにホームランをよく被弾する投手も「花火師」といわれるが、そっちの花火師はお呼びでない。
野球に関わる仕事のなかで、職人技で真っ先に頭に思い浮かぶのは阪神園芸だ。阪急阪神HDの子会社で長年、甲子園球場のグラウンド整備を担当している。昨年のCSでも午前中まで大雨でグラウンドが沼状態の中、プレーボールの18時には何とか試合ができる状態に仕上げた。
雨天でのグラウンド整備になると、球場でもSNSでも「ガンバレ、園芸さん」と声援が飛ぶ。
阪神園芸の凄みは「何をやっているのか」が一目で分かることだろう。高校野球をはじめ、地方球場でグラウンド復旧を見ることはあるが、専門のグラウンドキーパーがいても、正直もどかしい思いをすることも多い。だが、阪神園芸の仕事はしっかりと役割分担されており、年間を通して整備をしているノウハウを感じる。手際がよすぎて見入ってしまうほどだ。
この春には甲子園球場の売店でタオルやTシャツなど、「阪神園芸グッズ」が発売された。匠の技の人気もついにここまできた!
文=落合初春(おちあい・もとはる)