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【ドラフト特集】2017ドラフト候補怪物図鑑〜希少&ハイブリッドな捕手・中村奨成(広陵)

【ドラフト特集】2017ドラフト候補怪物図鑑〜希少&ハイブリッドな捕手・中村奨成(広陵)

 個性豊かな10人の注目ドラフト候補のストロングポイントに迫る「ドラフト候補怪物図鑑」。第一回は今夏の甲子園で大ブレイクの中村奨成(広陵)が登場!


 今年の高校生ドラフト候補で上位指名が確実視されているのが中村だ。今夏の甲子園で大会記録を更新する6本塁打を放ったことは記憶に新しい。怪物の全国デビューはあまりに鮮烈だった。

甲子園を驚かせたのはプロ仕様の“強送球”


 中学野球や高校野球を“生”で見ると常々気づかされることがある。投手の質や差はテレビ画面からも伝わるが、各校の力量が如実に現れるのが送球力だ。

 中堅以上のチームになると試合前のノックで守備の巧拙を計るのは難しい。それでも全体的な送球の力強さでレベルがはっきりとしてくる。

 そして、何よりも捕手の差が大きい。高校生にもなるとほとんどのチームで強肩選手が扇の要を守るが、強豪と呼ばれるチームでも「このキャッチャーだと盗塁フリーパスなのでは……?」と思うこともしばしば。「これは盗塁できないな」と思わせる捕手となると、全国を見渡しても稀有な存在である。

 中村が甲子園で示したのは、その稀有なほどの強肩だった。

 中村の二塁送球の到達タイム1.9秒。数字は高校生最上位レベルだ。しかし、プロ入りする捕手は全員その水準である。そこからのプラスアルファがプロで「強肩捕手」と呼ばれるか否かの分かれ目だ。

 中村の送球にはその要素があった。低めから低めに矢を放つような送球。手首、ヒジをしならせて一瞬のうちに送球する。肩を大きく使った「強肩」ではなく、しなりを生かした「強肩」。肩というよりは「強送球」と言ったほうがしっくりくる。

 甲子園歴代最多の6本塁打、17打点の打撃もさることながら、生観戦したファンやスカウトの脳裏に焼きついたのは、中村の身のこなしではないだろうか。

 イニング間の二塁送球や奪三振後のボール回しの入り方、バント処理の速さなど、中村の素早いムーブメントは今まで高校生捕手に与えていた「強肩」「好捕手」というワードの安易さを否定するような迫力があった。

 広陵の中井哲之監督が「広陵史上ナンバーワン捕手」と断言するのも決して言い過ぎではない。

【ドラフト特集】2017ドラフト候補怪物図鑑〜希少&ハイブリッドな捕手・中村奨成(広陵)

俊足巧打強肩の新時代の捕手になれる器!


 心配なのは体力面だ。甲子園後のU-18ベースボールワールドカップでは打撃不振に喘いだが、さすがに疲労困憊だった。プロの試合数はこんなものじゃない。年間を通じて捕手をやるにはしっかりとした体力作り、脱力の会得が必要だろう。

 また、足もすこぶる評判がいい。50メートル走6.0秒の俊足を備え、甲子園でも2盗塁を決めている。181センチのサイズ感も申し分ない。

 将来像は今季でロッテを退任する伊東勤監督の現役時代。今でこそ、愛嬌のある体型になっているが、現役時代はスマートで1984年には20盗塁をマークするなど、「元祖・ハイブリッド型」の捕手だった。

 その後も「走れる捕手」という前評判の選手はいたものの、ウワサの域を出ず、結局、プロ野球の世界ではいるのかいないのかよくわからないカテゴリーと化している。

 ややもすれば、内野手や外野手に転向……。中村に抜群の身体能力があるからこそ、そんな心配をしてしまう。

 21世紀の「ハイブリッド型捕手」のパイオニアになるだけの打力、走力、守備力、強肩を持ち合わせた逸材。「夢のある育成」を期待したい。


文=落合初春(おちあい・もとはる)

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