新型コロナウイルスの影響でNPBの開幕は当初予定されていた3月20日から4月10以降へと延期になった。その事実に対し、多くの球界関係者がコメントを残している。
非常事態と向き合ったときのコメントだけに、心に響くものも多い。その中から、日常生活でも流用できそうな発言を紹介したい。
現場を預かる監督たちは気苦労が絶えない。いつ開幕しても勝利にこだわっていくことが求められる。全チームが同じ条件で戦うわけなのだから、言い訳ももちろん許されない。そのうえで選手のコンディションを見極めていかねばならないのである。
中日の与田剛監督はこの事態を後ろ向きにとらえず、前を向いている。
「こういう時こそできることがある。すべてがマイナスではない」
開幕が延期になったことをマイナスととらえるのではなく、プラス面もある。与田監督はそういったことを発信したのである。
調整が遅れている選手や故障している選手にとっては、開幕の延期はプラスとなる。また、チームとしても様々な起用に関するテストを行うことはプラスに働くだろう。
これはすべての事柄に通じてくる。マイナスのことが起こったとき、どれだけプラスととらえることができるか。その思いが強いほど前向きな気持ちとなってくるはずだ。決して悲観することはない。そうとらえることができれば、気持ちも明るくなる。
一方、ヤクルトの高津臣吾監督はこのようにコメントしている。
「非常に残念ですけど、これが今後、いい判断だった、いい決断をしたんじゃないかと思われるように、開幕した時にいいプレーができるよう我々はしっかり準備をしていくだけと思います」
今回の判断が「いい判断だった」と思われるように行動していくということである。なにごとにおいても判断した瞬間に答えはでない。そのあとの行動によって判断の是非は変わってくる。
事が起こった後の行動に対する意識を高めること。心がけたいものだ。
日本ハムの栗山英樹監督は選手に対し、変わらずに準備することを説いている。
「開幕が3週間後なのか1カ月後なのかわからないけど、その時期(開幕)は必ずくるわけで、そういうとらえ方をしてくれ、と。『いつ開幕するのか』ということに引っ張り回されてはいけない」
特に投手は自身の登板予定日から逆算してコンディションをつくっていく。開幕日が決まらないということは、登板予定日も決まらないということになる。しかし、そこに引っ張られることなく、準備をする。そういった考え方だ。
一般社会においても同様だ。企業であれば取引先や上司、プライベートであれば友人や家族の返答があって初めて取り組めることも多いだろう。しかし。そういったときも栗山監督の言葉を思い出し、「いつ返事がくるのか」に左右されず、準備をすることを心がけたい。
また、監督だけではなく選手も様々なコメントを発している。日本ハムの西川遥輝は端的に言い切った。
「しっかり準備しないと。プロなんで」
開幕が遅れようとプロ野球選手として仕事をしている以上は、準備をしっかりと行なって結果を残さねばならない。これはプロ野球選手という職業に関わらず、どの職業にも通じることだ。
なにかのアクシデントがあったときも「プロ意識」を持って結果が出るようにしっかりと準備する。その心構えは重要だろう。栗山監督のコメントに通ずるものがある。
MLBでは7月開幕説も出ており、ほかの国のスポーツやイベントは中止や延期が相次いでいる。現時点でNPBがどのような結論を出すのかはわからないが、選手や監督たちの前向きな言葉を受け止め、開幕の日を待ちたい。
文=勝田聡(かつた・さとし)