ストーブリーグ真っ只中のプロ野球界。今年はド派手なFA移籍もなく、残すところは前田健太や李大浩などメジャー挑戦組のみ。
…と思いきや、ひとり窮地に立たされている男がいた。
それは11月に広島からFA宣言した木村昇吾である。2015年シーズンは72試合に出場。代打、代走、守備固めをはじめ、ユーティリティープレーヤーとして活躍。打率.269をマークしていた。
35歳というベテランの域に入っているが、内野全ポジションに加えてレフトも守れ、そこそこの足もある木村。今季年俸は4100万円で金銭・人的補償の必要がないCランク。秋口の段階では「お買い得FA選手」のひとりと言われていた。
「他球団の話を聞いてみたい」
そう報道陣に語り、FA宣言した木村。しかし、待てども待てども他球団から獲得打診の連絡は来ず、去就は宙ぶらりん。
広島はFA宣言しての残留を認めておらず、なんと木村はFA宣言したにも関わらず、年末の時点で来季の所属球団が決まらない事態に陥ってしまった。
この事態に野球ファンは騒然。FA宣言していなければ、契約更新は確実だったことから、ネット上で「セルフ戦力外」というワードが急速に広まっている。
「木村昇吾さん、史上初のセルフ戦力外に」
痛烈な揶揄にさらされることになった木村だが、12月に入ると恥をかき捨て、自分から11球団への売り込みを開始。これもネット上では「木村“が”○○(球団)“に”興味」などと揶揄された。
そんな悲劇の人となってしまった木村だが、売り込みの甲斐もあって12月25日、西武が2月宮崎・南郷キャンプでテストすることを発表。FAからのテストという“戦力外選手”のような展開だが、木村にとっては嬉しいクリスマスプレゼントになった。
しかし、まだテストが決まった段階。入団は決まっておらず、万が一、不合格になった場合、史上初のFA宣言→引退選手となる可能性を秘めている。
巨人にFA移籍した脇谷亮太の補填として実は獲得が決まっているんじゃないの…? と思いたくなるが、それならば西武側も木村の顔を立てて即時獲得を発表するはず。ということは春の南郷キャンプは正真正銘の“テスト”なのだ。
12月からはカープの練習場を締め出され、現在は楽天入団が決まった栗原健太とともに広島市内で自主トレを続けている木村。ごちそうが揃う正月を目前に控え、早くも胃が痛む思いをしているだろうが、自主トレにしっかりと力を入れ、万全の状態でテストに挑みたいところだ。
文=落合初春(おちあい・もとはる)