鹿児島の強豪・樟南時代に2度甲子園に出場し、2005年の高校生ドラフト4巡目で入団した大和。1軍デビューは4年目とやや時間がかかったが、そこからはコンスタントに試合に出場。チーム内での地位を確立していった。
特に代名詞ともいえる守備はハイレベル。ゴールデン・グラブ賞に輝いたのは2014年の外野手部門での1回のみで、最も出場機会が多いポジションも外野だが、二塁、遊撃を中心に、内野の各ポジションも水準以上にこなせる実力を持っている。
今季は、100試合に出場し打率.280。本来は右打ちのところを、昨秋のキャンプからは左打ちにも挑戦し、両打席でヒットを放った。学生時代、あるいはプロ入り後の早い段階でのスイッチヒッター挑戦はそう珍しいケースではないが、10年以上のキャリアを積んでから挑戦し、実戦レベルまで高めた選手は、過去にほとんど例がないのではないか。いかに大和の野球センスが高いかがわかる。
また、2013年には19盗塁をマークした俊足で、2014年にはリーグトップの50犠打を記録する器用さもある。ちなみに、年間50犠打以上は、大和を含めて過去に14人しか達成していない(複数回達成者あり)。
先発で使ってももちろんよし。そして、スーパーサブとしてベンチに待機していれば、この上なく心強いことだろう。
大和は、球団の公式サイトを通じて以下のコメントを発表している。
「この度FA権を行使することを決断いたしました。シーズンが終了してから本当に悩みました。12年間お世話になったタイガースへの愛着や感謝の気持ちも言葉に表せないぐらいのものがあります。ただ、他球団の自分に対する評価を聞くチャンスは今しかないという思いも強く、今回の決断にいたりました。移籍を前提とした権利の行使では無く、タイガースも含めて、自分を一番必要としてくれる球団で来季プレーしたいと思います」
本格的な交渉はこれから。DeNAやオリックスが名乗りを挙げるとの報道もあり、阪神も全力で慰留に努めるという。移籍した場合は新たな気持ちでプレーできるだろうし、阪神に残った場合も、それはそれでスッキリと来季に向かえるのではないか。
実際にどの球団が名乗りを挙げ、そしてどういう着地となるのか。稀代のユーティリティープレイヤーの去就から目が離せない。
文=藤山剣(ふじやま・けん)