そんななか、不動の4番・中田翔とともに、打線の要として機能しているのが、開幕から主に3番打者として出場を続けている田中賢介だ。
田中は、サンフランシスコ・ジャイアンツ、テキサス・レンジャーズ3Aを経て、昨季古巣の日本ハムに復帰。
「米球界から日本球界に復帰した野手はパッとしない」といったイメージがある昨今。まして、海外ではほとんどマイナー契約だった田中に対する世間の期待度は、あまり高くなかった。
しかし昨季の成績を調べると、134試合に出場して打率.284(リーグ9位)、151安打(リーグ6位)、得点圏打率.346(リーグ4位)、さらにベストナイン受賞と、確実に結果を残して周囲の声を一蹴。
そして今季成績も、4月終了時点で打率.311、得点圏打率.387と、好調を維持。中田翔へのつなぎ役はもちろん、時には自分で走者を還すこともできる、まさに打線のキーマンといっていい活躍ぶりを見せている。
現在はリーグ上位の得点圏打率を残して、チャンスの場面での仕事を見事にこなしている田中。しかし、これは実力の一端に過ぎない。
2010年は1番打者として34盗塁を記録して、2007年は2番打者として58犠打のリーグ記録(当時)を保持。つまり、首脳陣のオーダーにどこでもアジャストできるということ。走・攻・守の三拍子を備えた、“職人”といえるだろう。
4月3日のソフトバンク戦では、田中の二塁へのスライディングが危険だということで問題となった。実際に負傷者が出ているので、ここではその行為の賛否には触れない。
しかし、もう一度あのスライディングを見直して欲しい。両手でそっと二塁ベースを抱きかかえるように滑り込んだ体勢については、「いい仕事してるな〜」と思わずにはいられないのだ。
日本ハムがこれから快進撃をするためには、もちろん中田や大谷の活躍が必要不可欠。しかし、その前に控える田中の「匠の技」にも、今一度注目してもらいたい。
文=サトウタカシ (さとう・たかし)