『野球太郎』がヤクルトの補強ポイントに挙げたのは「ケガに強い即戦力の先発」、「即戦力リリーフ」、「さらに強化するスラッガー」、「右打ち外野手」、「素材型野手」だった。「ケガに強い即戦力の先発」から順に指名結果を見ていこう。
ヤクルトといえば、毎年ケガ人が出るイメージが強い。今季はとくに先発ローテーションで苦しみ、シーズンを通してローテーションを守った投手は1人もいなかった。
小川泰弘が唯一規定投球回に達したものの防御率は4.50と不振。規定投球回数以上を投げたセ・リーグの投手のなかで最下位の防御率だった。昨年獲得した成瀬善久も2年連続で期待されていた活躍ができなかった。先発陣の整備は必至だ。
ヤクルトはこの苦境を脱するために、田中正義(創価大)ら大学生、または社会人の即戦力先発投手を1位指名するかと思われた。しかし結果は、高校生左腕の寺島成輝(履正社高=写真)を単独1位指名。すでにヤクルトは即戦力と見ているが、まだ伸び代も十分。数年後にローテーションの柱になれるよう、まずは焦らず育ててほしい。
今季は秋吉亮とルーキは安定していたが、ほかのリリーフ陣の防御率が悪く、救援陣の整備も必要なヤクルト。
「即戦力リリーフ」という点では、2位指名の星知弥(明治大)、4位指名の中尾輝(名古屋経済大)の2人が視野に入る。
星は先発としても投げているが、リリーフの経験も豊富。最速156キロのストレートが武器の力投型右腕だ。コントロールにバラツキがあるのは心配だが、フォークも投げられるので、うまくハマれば面白い。
左腕の中尾も力投型。ストレートの最速は151キロで、左右の内角に投げ分ける制球力がある。
◎補強ポイントB「さらに強化するスラッガー」
野手の層も厚いとはいえないヤクルト。今季は山田哲人、川端慎吾、雄平、畠山和洋が揃って故障し、ファームの戸田球場に勢揃いするという異常事態にも陥った。
野手陣で孤軍奮闘したバレンティンは退団の可能性が高い。ベテランの畠山には衰えが見え始めている。となるとスラッガータイプの選手を獲得すべきだったが、スラッガータイプの指名はなかった。
川上竜平は戦力外通告を受けた。さらにバレンティンが退団となった場合、1軍の右打ちの外野手は5人程度。最低でも1人は右打ちの外野手を獲得したかったが、今回のドラフトでの指名はなかった。
「素材型野手」には5位指名の古賀優大(明徳義塾高)が当てはまる。肩の強さが魅力の高校生捕手で二塁送球の最速タイムが1秒78と速い。また、4番を務め、今夏の甲子園では16打数10安打、打率.625と打撃力にも光るものがある。将来の正捕手になる可能性を秘めた選手だ。
【総合評価】75点
2年連続のセ・リーグ制覇を逃し、5位という不本意なシーズンとなったヤクルト。
チームの立て直しのため即戦重視のドラフトになるかと思いきや、指名された選手を見るとポテンシャルを重視したようだ。下位に沈んだチームながら「攻めたドラフト」だった印象が強い。また、指名のほとんどが投手だった。
首脳陣は1位で単独指名した寺島を即戦力と見ているが、1年目からどこまで結果を出せるのかは計算しづらい。だが、非常に魅力のある投手なのは確か。数年後には先発ローテの中心投手に育っている姿を期待したい。
また2、3、4位指名には星、梅野雄吾(九産大九産)、中尾と馬力のある力投型投手が揃った。どの投手もポテンシャルも高く、伸びしろも十分だ。
一方、野手は育成も含めて2人の指名に留まった。来季の野手陣の「戦力のプラス」には程遠く感じる。中日の平田良介がFA権を行使した場合、獲得に乗り出すと噂されているだけに、今オフにどのような補強をするのか。その動向にも注目したい。
文=山岸健人(やまぎし・けんと)