2019年シーズンが始まって、約1カ月が経過。前評判どおり好発進をきめた球団、実力を出し切れていない球団など、序盤から悲喜こもごもの展開が繰り広げられている。開幕からの20試合前後を、ざっと振り返ってみよう。今回はパ・リーグ編!
(※成績は4月21日現在)
2018年のリーグ覇者の西武だが、投手では菊池雄星(昨季14勝4敗)がマリナーズへ移籍。野手では浅村栄斗(昨季打率.310、32本塁打、127打点)が楽天へ、炭谷銀仁朗(昨季打率.248、0本塁打、9打点)が巨人へともにFA移籍し、主力3人が抜けた。
それでも強力打線は健在で、今シーズンのチーム得点は1位、チーム打率は2位と打力はリーグトップクラス。しかし、チーム防御率が4.54とリーグワーストで、得点も失点もリーグ最多と、出入りの激しい状態となっている。
開幕投手の多和田真三郎は1勝2敗ながら防御率3.08と粘っているが、2勝2敗の高橋光成が防御率4.31、同じく2勝2敗の今井達也が5.87と不安定。チームは借金3で4位だが、ポテンシャルの高い、この若い3本柱が登板を重ねながら成長していけば、浮上の可能性は十分。
3年連続日本一がかかるソフトバンクは、開幕から引き分けを挟んで5連勝と好スタートを切ったものの、故障者が続出で苦境に立たされている。
野手では中村晃、柳田悠岐、グラシアル、福田秀平、明石健志、長谷川勇也、西田哲朗らがケガや病気で離脱。投手陣も和田毅、岩嵜翔、石川柊太、バンデンハーグ、サファテと主力が不在で、リハビリ組だけで優勝争いできるチームが組めるほどだ。
それでも、21試合で11勝8敗と貯金を作り、首位争いを繰り広げているのはソフトバンクの底力か。また、投手では4勝を挙げている高橋礼や中継ぎで8試合に投げ無失点の甲斐野央、野手では育成出身の外野手・釜元豪など新戦力も台頭。あとはどれだけ早く離脱した選手が復帰できるかにかかっている。
本塁打王経験者のレアードの移籍は痛いが、台湾から4割打者の王柏融、オリックスから実績のある金子弌大と、新戦力も加わっており、戦える状態となっている。
加えて栗山英樹監督が、最初から先発投手を早めに下ろすプランで投手起用を行うショートスターターや、三塁手を一、二塁間に配置する極端な守備シフトを敷くなど、多彩な戦術を駆使。突出した成績を残している選手がおらず、チーム本塁打もリーグワーストの9本ながらも、18試合で9勝9敗、5割で3位につけている。
投手陣では、開幕から3連勝の有原航平の復調が大きい。リリーバーの防御率が5点台とよくないので、そこは改善したいポイントだ。
攻撃面では、大砲不在が続いていただけに、シーズン30発を十分期待できるレアードの加入が大きい。すでに19試合で8本塁打と本領を発揮しており、引きずられるように、これまで年間2ケタ本塁打を記録したことがない中村奨吾が5本、加藤翔平が4本、角中勝也も4本と、本拠地のホームランラグーン新設の効果とも相まって、チームカラーが変わりつつある。
投手陣では、先発の防御率が5点台とピリッとしないところを、2点台中盤のリリーフが補っており、成績は19試合で8勝11敗。4位タイで粘っている。ソフトバンクには5勝1敗と勝ち越しており、これをこの先も続けられるようなら、上位進出の足がかりとなりそうだ。
7勝10敗でゲーム差なしの最下位に沈んでいるオリックス。攻撃面では、リーグトップの23盗塁を記録。走るイメージはあまりないチームだが、今季から就任した西村徳文監督は現役時代に盗塁王を4度獲得しており、選手にも盗塁の重要性を浸透させているのだろう。
犠打も12回仕かけて11回成功と細かい野球は実現しつつあるが、いかんせん得点圏打率が.211とリーグ5位。チームトップの10打点を挙げている2人のうち、吉田正尚は得点圏打率.167、メネセスも同.211。他の選手も、軒並み2割前後で、チャンスは作っても、あと一本が出ていないのが現状だ。
吉田は過去3年、得点圏で2割8分以上の打率を記録しており、通常営業まで戻せるかどうかが、オリックス浮上のカギとなりそう。チーム防御率3.69はリーグ3位と健闘している。
19試合消化し12勝6敗1分で首位。ある意味、大穴と言えるのが楽天の躍進だろう。開幕前の順位予想で、楽天を1位に挙げた解説者は、ざっと見渡した限り藪恵壹氏(元阪神ほか)ぐらい。もちろんまだ序盤で、最終結果は神のみぞ知るところだが……。
チーム成績を見てみると打率.245はリーグ3位、防御率3.23は同2位、得点、失点もともに2位と、安定はしているものの突き抜けた数字ではない。総合力で勝ち取っている今の順位と言えそうだ。
戦力的なトピックは、やはり浅村栄斗の加入だろう。打点王を獲った打力はもちろんだが、昨シーズン、7選手が守った二塁手を固定できたことも大きい。現有投手陣が、戦線離脱中の則本昂大、岸孝之の復帰まで今の調子をキープできていれば、このまま逃げ切りもある!?
文=藤山剣(ふじやま・けん)