昨年オフの11月2日、巨人と日本ハムとの間で2対2の大型トレードが発表された。巨人からは外野手の大田泰示と投手の公文克彦、日本ハムからは投手の吉川光夫と外野手の石川慎吾。このトレードでどちらのチームが得をしたのか? 移籍前、移籍後の成績から考察してみる。
まずはこの4選手の2016年までの成績を見てみよう。
■大田泰示(巨人在籍8年)
225試合:打率.229/9本塁打/40打点
■公文克彦(巨人在籍4年)
15試合 0勝0敗0S 防御率3.07
■吉川光夫(日本ハム在籍10年)
162試合 48勝56敗3S 防御率3.71
■石川慎吾(日本ハム在籍5年)
103試合 打率.193 3本塁打 23打点
2016年までの実績から上位・下位選手見れば、巨人側は「大田>公文」、日本ハム側は「吉川>石川」となる。そして、それぞれの上位・下位選手同士を比較すれば、「吉川>大田」、「石川>公文」という図式で異論はないだろう。となると、今シーズンが始まる前の見立てでは、得をしたのは吉川と石川を迎え入れた巨人となる。
ただ、「巨人が得をした」という見立ては、あくまで昨季までの実績をもとにした話。移籍により起用法が変われば、当然、4選手のパフォーマンスも変わってきて不思議はない。新天地での今季成績はこうなっている。
■吉川光夫
4試合:0勝1敗0S/防御率3.86
■石川慎吾
46試合:打率.273/3本塁打/10打点
■大田泰示
32試合:打率.241/6本塁打/17打点
■公文克彦
12試合:0勝0敗0S/防御率5.79
4選手の中で、出番が最も多いのが石川だ。開幕当初、代打で起用された5打席は三振、三振、併殺打、三ゴロ、三ゴロと凡退したが、6試合目に代打から出場し3打数2安打と当たりが出ると、そこからスタメンで起用されるように。
4月28日のヤクルト戦では、移籍後初アーチを含む3安打で、ビジターではあったがヒーロインタービューに呼ばれた。ゴールデンウイーク明けには一時的に打率も3割を突破。流動的な巨人の外野陣にあって、ほぼスタメンで起用され続けている。
また、大田も新天地で存在感を発揮している。4月23日に1軍登録されると、そこから1試合を除いてすべてスタメン起用。昨年までの通算本塁打が9本だったのに対し、移籍後は早くも6本を記録するなど、そのパワーを見せつけている。
大田の活躍に伴い、低迷していたチームもどん底からは脱出した。スイングスピードや走力、肩の強さなどポテンシャルは間違いなく一級品。ただ、巨人ではそれを安定して発揮することができなかった。パ・リーグならではの開放感が大田に合っているのかもしれない。
このように、野手の石川と大田は、新天地でほぼ互角の活躍を見せている。
一方、吉川、公文の両投手は、上記の数字を見てもわかるとおり、公文の貢献度がやや高めか。
公文は、スリークオーターから繰り出すクロスファイアーを武器にオープン戦9試合で自責点1と好投。開幕1軍を勝ち取り、セットアッパーとして起用され、まずまずの結果を残していた。しかし、4月14日の楽天戦で藤田一也に頭部へ死球。これにより危険球退場となってしまった。
そこから調子を落とし2軍落ち。しかし、5月28日に再登録されてからの4試合は、いずれも1イニングを無失点に抑えている。巨人時代は4年間で15試合の登板だった投手が、移籍後はシーズン序盤で早くも12試合。貴重な中継ぎ左腕として、これからも重宝されそうだ。
吉川は、移籍後初登板で6回2失点と好投するも、2試合目の登板では2回を持たず4失点で降板。試金石となった3試合目、5月24日の阪神戦では、4回までパーフェクトに抑えながら、5回に初安打を許したあと、鳥谷敬への顔面死球で危険球退場。このすっぽ抜けた1球が悔やまれる。繊細な面がある選手だけに、ここからメンタルも含めて立て直せるかがポイントだ。
しかし、不安は的中。5月31日の楽天戦で4回2/3を投げ4失点。負け投手となってしまった。
野手の大田と石川は互角、投手の吉川と公文では、公文が一歩リード。トータルで考えれば、現時点で得だったのは僅差で日本ハムということになりそうだが、この先、吉川が立ち直ってくればこのジャッジも変わってくるだろう。
いずれにしても、移籍した4選手がそれぞれポジションを確保できているのは何より。トレード自体は成功だったと見てよさそうだ。
(成績は6月6日現在)
文=藤山剣(ふじやま・けん)