前回の2013WBCで大会史上初の全勝優勝を飾ったドミニカ共和国。今大会も連覇を狙うのにふさわしいメンバーを招集している。
一塁はハンリー・ラミレス(レッドソックス)、二塁はロビンソン・カノ(マリナーズ)、遊撃はマニー・マチャド(オリオールズ)と内野陣は強力だ。
当初、三塁を守る予定だったエイドリアン・ベルトレ(レンジャーズ)が左ふくらはぎを負傷したため1次ラウンドを欠場。2次ラウンド以降に出場できるかどうかは、今後の状態を見て判断することになった。
しかし、ベルトレが不在でも打線は強力。並の投手陣だと簡単に粉砕されてしまいそうだ。
投手陣もエースにトルネード投法のジョニー・クエト(ジャイアンツ)、2番手に若手有望株のカルロス・マルティネス(カージナルス)と本気のメンバーを招集。中継ぎ・抑えにも、昨シーズン51セーブのジュウリス・ファミリア(メッツ)、73回を投げ126奪三振のデリン・ベタンセス(ヤンキース)らメジャーを代表する投手が揃っている。
ドミニカ共和国とともにプールCに入ったのはアメリカ、コロンビア、カナダ。前評判ではドミニカ共和国とアメリカの1次ラウンド通過が有力視されている。しかしドミニカ共和国は、2009WBCではオランダに足元をすくわれ1次ラウンド敗退しているだけに、決して油断はできない。
これだけの巨大戦力を整えたドミニカ共和国を率いるのは、前回、チームを優勝に導いたトニー・ペーニャ監督。実績十分とあって選手たちからの信頼も厚い。タレント揃いのメンバーをどう操るのか。その采配も注目だ。
開催国でありながら過去3大会で決勝進出すら果たせていないアメリカ。今大会は強打者を揃えた布陣で、悲願の初優勝を目指す。
大砲のジャンカルロ・スタントン(マーリンズ)、2年連続でナショナル・リーグ二冠王に輝いたノーラン・アレナド(ロッキーズ)、ワールドシリーズを3回制覇した強打の捕手、バスター・ポージー(ジャイアンツ)らが集う野手陣は強力だ。
投手陣は、エースとして期待されたマックス・シャーザー(ナショナルズ)が骨折のため出場辞退となったが、クリス・アーチャー(レイズ)、タナー・ロアーク(ナショナルズ)らの先発を揃えてきた。
しかし、待望論が強かったクレイトン・カーショー(ドジャース)、マディソン・バムガーナー(ジャイアンツ)といった「スーパーエース」は出場せず。ベストとは言い難い投手陣ではある。
初優勝実現の鍵となるのは、やはり投手陣だろう。彼らが試合を作ることができなければ2次ラウンドで対戦濃厚なベネズエラ、ドミニカ共和国に敗れ大会を去らねばならぬ可能性もある。
とはいえ、全試合ホーム開催という「超アドバンテージ」がアメリカにはある。地の利を生かして、まずは準決勝まで確実に勝ち上がりたい。
前回の2013WBCでは準決勝で日本を倒し決勝進出したプエルトリコ。決勝ではドミニカ共和国に敗れ悔しい準優勝に終わっただけに、今回は悲願達成といきたい。
チーム編成はヤディアー・モリーナ(カージナルス)、カルロス・ベルトラン(アストロズ)といったベテラン勢が中心。
しかし内野陣は、カルロス・コレア(アストロズ)、フランシスコ・リンドーア(インディアンズ)、ハビアー・バエズ(カブス)ら「新時代の担い手」と期待される若手選手たちが揃った。
チーム全体を見渡すと、捕手のモリーナと若手内野陣は強いが、投手陣に隙がありそうだ。
エースこそ昨シーズン13勝をマークしたヘクター・サンティアゴ(ツインズ)が務めるが、2番手以降は昨シーズンに初のメジャー登板を果たしたセス・ルーゴ(メッツ)、ホセ・ベリオス(ツインズ)と心許ない。アメリカ同様に投手陣の出来が準決勝進出の鍵となる。
昨年12月、オマー・ビスケル監督が解任の報が流れると、フェリックス・ヘルナンデス(マリナーズ)、ミゲル・カブレラ(タイガース)ら多くの主力選手達が一斉にボイコットを表明。お家騒動が勃発したベネズエラ。
数日後にはビスケル監督の続投が決まり、元の鞘に収まったことからボイコットは消滅。この一件でメンバーたちの結束はより深まったようだ。
チームの中心となるのはカブレラ、ホセ・アルトゥーベ(アストロズ)、ビクター・マルティネス(タイガース)、カルロス・ゴンザレス(ロッキーズ)らの野手陣だ。メジャーのスプリングトレーニングが始まる前にミニキャンプを張るなど、今大会に掛けるベネズエラの意気込みは熱い。
エースのヘルナンデス、クローザーのフランシスコ・ロドリゲス(タイガース)としっかりしているだけに、2番手以降の投手陣の踏ん張りに上位進出がかかっている。
日本も含めエース級の参加が難しいWBC。どの国もエース級が全員参加とはならず、苦しい台所事情だ。WBCでは仕上がりが早く、安定した投球を見込める複数の投手を用意することが優勝に近づく条件といえそうだ。
文=勝田 聡(かつた さとし)