新天地を仙台に求めてNPB復帰した2011年以降、東北のため献身的にプレーする姿が、ファンの胸を打った。慢性的な長打力不足に悩むチーム事情にあって、6シーズンで137本の二塁打、13本の三塁打、49本の本塁打を供給。中距離打者として申し分のない槍働きを見せ、2013年の日本一にも貢献した。
2015年には本格的に外野手へ転向。右翼手として存在感を発揮する。走者一塁の場面で右翼に単打を打たれても、三塁を狙う走者を「肩の抑止力」で諦めさせ、二塁でストップさせてきた。
昨季は56試合に出場し、打率.213、13打点、2本塁打。「オワコン」扱いする読者もいるかもしれない。しかし、今季は活躍するはずと見るべきだ。
というのは、昨季は不運が重なり過ぎたからである。3月29日のロッテ戦のケガが原因であることは明らか。不慣れな中堅の守備でケガした右膝痛が尾を引いたのだ。どこかが目立って衰えたのでは決してない。
今季、右膝と腰の具合が良好なら、当代随一のスイッチヒッターはふたたび輝くはず。筆者が復活を予感する要因には、スピードボールへの素晴らしい対応力がある。
一般に、剛速球に差し込まれての打ち損じが増えると、ファンもベテランの衰えを認めざるをえない。しかし、松井稼は不調の昨季でも、印象に残るスピードボール撃ちを披露した。
たとえば、内竜也(ロッテ)の147キロへの対応。本拠地・Koboスタ宮城の左翼・Eウィングに運ぶ一閃で応じた。菊池雄星(西武)が繰り出す外角156キロには、逆らわない鋭いスイングで右中間後方へ弾き返す珠玉の二塁打。痛烈なセンター返しに仕留めたのは、塚原頌平(オリックス)の145キロ、スタンリッジ(ロッテ)の147キロだった。
プロ24年目の今季も、ファン待望の記録更新のシーズンになりそうだ。安打数は日米通算2683本。王貞治氏(元巨人)の2786本まで103本とする。残り1本に王手をかけているのが、NPB100人目の通算200本塁打だ。
松井稼の看板ともいえる通算二塁打数は、川上哲治氏(元巨人)と並ぶNPB歴代10位タイの408本。9位・榎本喜八氏(元毎日ほか)の409本、8位・長嶋茂雄氏(元巨人)の418本、7位氏・張本勲氏(元東映ほか)の420本を視野にとらえている。
通算177回の猛打賞は歴代6位。5位・福本豊氏(元阪急)の178回まで残り1、4位・野村克也氏(元南海ほか)の180回まで残り3だ。
今季の復活劇を見守り、快記録達成の瞬間を楽しみに待ちたい。
文=柴川友次
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