2008年のドラフト5位でソフトバンクに入団した攝津は、ルーキーイヤーの2009年は70試合に登板。ファルケンボーグ、馬原孝浩へと継投する勝利の方程式「SBM」の一角として39ホールドポイントを挙げ、最優秀中継ぎ投手と新人王のタイトルを獲得した。
2010年も42ホールドポイントで最優秀中継ぎ投手を獲得し、2011年から先発に転向。5年連続2ケタ勝利を記録し、2012年には17勝でリーグ最多勝に輝くなど、エースとして君臨した。
昨季は球団記録となる5年連続の開幕投手を務めたのだが……、成績不振で2軍落ち。登板数は7試合で2勝2敗、防御率5.59と自己ワーストを記録してしまった。
雪辱を期した今季だったが、開幕は2軍スタートとなった。
2軍では2試合に登板して2勝、防御率0.75と格の違いを見せるも、1軍では今季初登板となった4月15日のオリックス戦で4回3失点。29日のオリックス戦では3回6失点。この時点では2試合で0勝2敗、防御率11.57と散々な結果に終わっていた。
攝津はこのままダメになってしまうのか。そんな声もささやかれるなか、5月6日のロッテ戦に先発。3度目のチャンスが訪れた。
序盤こそ制球に苦しみ5回で4失点。いつ交代させられてもおかしくない内容だった。しかし、回を追うごとに「らしさ」を発揮。6回は3つのアウトをすべて内野ゴロで切り抜けると、7回は平沢大河、細谷圭から連続三振を奪う。8回は連打を浴び1死一、二塁のピンチを迎えるも、慌てることなく後続を退けた。
終わってみれば8回を投げて被安打7の4失点。打線の援護がなく敗戦投手になったものの、121球を投げ、シーズン31試合目にしてチーム初の完投投手となった(5月7日現在、3試合を投げて、防御率は7.80)。
ロッテ戦終了後、工藤公康監督と、攝津と同い年のキャプテン・内川聖一が「勝ちをつけてあげたかった」と語ったように、チーム内でも攝津の復活を願う声は多い。
これから交流戦へ向けて6連戦の日程がしばらく続く。2軍で結果を出している笠原大芽や小澤怜史、攝津同様に復活を期する大隣憲司ら虎視眈々と上を目指す投手がいるなか、攝津に次のチャンスは巡ってくるのか? そして、輝きを取り戻すことはできるのか?
と、ここまで書きながら、個人的な意見を書かせてもらうと…。7年ぶりのセットアッパー復活という起用法も面白いのでは、と密かに思っている。
岩嵜翔、サファテら150キロ超えのストレートを投げ込むリリーフ投手のなかで、制球力に長けた攝津の存在がいいアクセントになるのではと思えるのだ。
かつての「SMB」とばかり、「翔(ショウ)」、「サファテ」、「攝津」の頭文字で「SSS」と呼ばれる勝利の方程式が作れるのでではないか。あるいは、攝津、五十嵐亮太、森唯斗の「SIM」とか。
いずれにせよ、まだ老け込む歳でもない。攝津が活躍する日が再びやってくることを期待したい。
文=溝手孝司(みぞて・たかし)
札幌在住の47歳。広告代理店運営、ライター、イベンター。生まれも育ちも北海道ながらホークスファン歴約40年。個人的な攝津のベストゲームは、2011年日本シリーズ。第3戦先発で勝利投手になった後、第5、7戦にリリーフ登板。1勝1ホールド1セーブを挙げた「攝津様様」のシリーズだった。