プロ野球はペナントレースの行方とともに、個人タイトルも気になる時期に入ってきた。ここでは、投打の主要タイトル争いの現状と、リーグMVPの可能性を探っていきたい。今回はセ・リーグ編
(成績は9月5日現在)
防御率、勝利数の2部門でトップを走るのが大瀬良大地(広島)だ。5年目となる大瀬良だが、シーズン記録のキャリアハイは、防御率が3.13、勝利数が10勝。しかし、今年は防御率2.21で15勝と、自身最高の成績を残している。2番手で追うのは、防御率が菅野智之(巨人)で2.59、勝利数がガルシアで12勝。その差と、大瀬良の8月以降の安定感を考えれば、投手部門の二冠獲得の可能性はかなり高そう。
セーブ王争いは、ここまで中崎翔太(広島)とドリス(阪神)が29セーブでトップ。これに山崎康晃(DeNA)が28セーブ、石山泰稚(ヤクルト)が26セーブで続く。5番手以降は大きく離れているので、タイトルはこの4人に絞られた様相だが、やはり勝ち試合を多く作れそうな広島の中崎が有利か。現在の防御率は2.73で、1点台だったここ2年ほどの安定感はないものの、初のタイトル獲得へ向けてギアを上げたいところだ。
奪三振部門は菅野が他を大きく引き離してトップを独走中(現在161奪三振で、2番手の山口俊は132奪三振)。アクシデントでもない限り、2016年に続く2度目のタイトル獲得が濃厚だ。
首位打者争いはビシエドが目下打率.352というハイアベレージで先頭をひた走っている。8月は47安打を放ち、セ・リーグ記録を更新。イチローの持つNPB記録まであと1本に迫った。9月に入っても調子落ちの気配は見られず、また、2番手グループの打率が3割3分台ということも考えれば、このまま逃げ切りそうだ。
本塁打王は筒香嘉智(DeNA)とバレンティンが33本、丸佳浩(広島)が32本、山田哲人(ヤクルト)が30本、岡本和真(巨人)が29本、鈴木誠也(広島)とソト(DeNA)が28本で、この上位7名の争いとなりそう。いずれも実力者で、ペナントレース最終戦まで白黒つかない可能性もあるが、現在5位のDeNAが、シーズン最終局面でCS争いから脱落しているようだと、打席での自由度が増す筒香に2度目の戴冠のチャンスが訪れるかもしれない。
なお、今季、ようやく覚醒した岡本だが、巨人の残り試合数は広島、ヤクルト、DeNAよりかなり少ない。それを考えると、よほどペースを上げないと苦しいか。
打点王はバレンティンの独走状態。目下113打点で、2番手のビシエドと岡本が91打点と、20打点以上の差が開いている。これはもうセーフティーリードだろう。本塁打王との二冠の可能性も十分。
広島のリーグ優勝はまず間違いない状況。したがって、MVPも広島から選ばれる可能性が高い。投手では大瀬良、野手では丸か鈴木が候補となる。3人とも最終的にはかなりのところまで数字を伸ばしそうなので、記者の投票数も拮抗するだろうが、20勝に迫るところまで白星を積み上げられれば、大瀬良に落ち着くのではないか。
広島の選手以外で名前が挙がるとすれば、3度目のトリプルスリーだけでなく史上初の「40-40」(40本塁打、40盗塁)を達成した場合の山田ぐらいか。
文=藤山剣(ふじやま・けん)