1998年夏の甲子園。横浜高が松坂大輔(現ソフトバンク)らを擁し、春夏連覇を達成した大会だ。決勝における松坂のノーヒットノーラン。準決勝・明徳義塾高戦で起こした奇跡の逆転。延長17回に及んだ準々決勝・PL学園高戦での死闘と、横浜高は甲子園史に残るドラマを生み出した。
その大会で、松坂の前に2回戦で立ちはだかったのが鹿児島実高の杉内俊哉(現巨人)だった。杉内は1回戦の八戸工大一高戦で1987年の芝草宇宙(帝京高、元日本ハムほか)以来となるノーヒットノーランを達成。打倒・横浜高への期待は大きかった。
試合は5回まで両投手が好投し0対0。その均衡が破られたのは6回だった。横浜高が後藤武敏(G.後藤武敏、現DeNA)の犠飛で先制。その後、8回には松坂の本塁打などで5点を追加し6対0で横浜高が快勝。一方、松坂は9回9奪三振の完封勝利。杉内を寄せつけなかった。
あれから19年が経った。今シーズンも2人はリハビリに務めている。登板はまだない。あの夏のように、再びマウンドに立つ日が訪れることを期待したい。
2010年夏の甲子園。主役は同年のセンバツを制していた興南高だった。エースは「琉球トルネード」こと島袋洋奨(現ソフトバンク)。唯一の下級生として出場した遊撃の大城滉二(現オリックス)も主力として活躍した。その興南高と準決勝で対戦したのが報徳学園高だった。
報徳学園高は1年生ながら快投を続ける田村伊知郎(現西武)を擁し勝ち上がってきた。田村は準々決勝で8回途中まで投げていたこともあり、興南高戦では中継ぎとして待機となった。
試合は初回から報徳学園高の打線が島袋を攻め5対0とリード。しかし、センバツ王者の興南高は慌てず反撃。中盤から得点を奪い報徳学園高の先発・大西一成をノックアウト。7回途中からマウンドに登った田村は無失点に抑えたが、興南はこの回、6対5と逆転に成功した。終盤は両投手ともに0点に抑え、そのまま決着。島袋と大城が決勝へと駒を進めた。
注目の1年生投手だった田村は卒業後、立教大へと進み、大城とチームメートに。そして昨秋のドラフトでプロ入りを果たした。
プロ入り後の大城と田村の対戦は1打数0安打。対戦機会が少ないので白黒つけにくいが、現段階では田村に軍配が上がっている。島袋と田村の投げ合いは実現していない。島袋も田村もプロでは未勝利だが、白星を挙げるのはどちらが先か。
2015年夏の甲子園決勝。東北勢にとって初の大旗が掛かっていたこの一戦。仙台育英高は神奈川の雄・東海大相模高と対戦した。東海大相模高の先発は小笠原慎之介(現中日)、対する仙台育英は佐藤世那(現オリックス)だった。また、仙台育英の3番・遊撃として平沢大河(現ロッテ)も出場していた。
連戦の疲れからか試合は序盤から点の取り合いとなり、8回まで6対6。9回表に小笠原の本塁打などで佐藤から4点を奪い、東海大相模が試合を決めた。両投手の息詰まる投手戦とはいかなかったものの、両投手ともに完投し甲子園を去っている。
また、試合には敗れたものの平沢は小笠原からチーム唯一のマルチ安打(4打数2安打)を放ち、ドラフト1位候補の片鱗を見せた。なお、決勝での出番はなかったものの東海大相模高のベンチには小笠原とWエースを務めた吉田凌(現オリックス)が控えていた。
4人ともこの年のドラフトでプロ入りし、それぞれのチームで奮闘中。現段階では1軍での対戦はないが、近いうちにプロでの再戦を見たい。
2014年夏の甲子園2回戦で日本文理高と東邦高が激突した。この試合の先発は日本文理高が3年生の飯塚悟史(現DeNA)、東邦高が1年生の藤嶋健人(現中日)。
飯塚は東邦高に先制点を許したものの、その後は東邦打線を寄せつけない。一方、藤嶋は6回に崩れ3失点。逆転を許しノックアウトされた。打線では9番だった飯塚にも安打を許している。
試合は飯塚がこのあとも東邦打線を封じ込め、3対2で勝利。日本文理高は2009年決勝で敗れた中京大中京高と同じ愛知代表の東邦高を相手に雪辱を果たした。
飯塚は2014年のドラフト7位でDeNAに入団し、今シーズン1軍デビュー。藤嶋は2016年のドラフト5位で中日に入団。まだ1軍での登板はない。両選手ともに下位指名での入団だが、ブレイクを果たし「あの夏、ふたりは甲子園で投げ合っていた」と取り上げられるようになることを願う。
文=勝田聡(かつたさとし)