来日当初は鮮やかだったクリムゾンレッドのヘルメットは変容した。今では、激戦を幾度も潜り抜けた勲章のように鈍く妖しい光を放っている。
今季、ウィーラーは139試合に出場、そのうち125試合で4番を張り、585打席で打率.265、27本塁打、86打点。いずれも1年目の成績を超えた(成績は10月3日現在)。
右手指で小刻みにリズムを取る打撃スタイルは、威圧感ではかつての楽天の主力打者・山崎武司やジョーンズに及ばない。しかし、チームを波に乗せるパワフルな打撃ではまったく引けを取らない。一発を放った試合でチームは18勝7敗と大きく勝ち越したことも、それを証明している。
そして何より、前年の14本塁打を上回る27本塁打は何「2年目の対応力」をよく表している。
27本塁打のうち、ウィーラーの対応力を物語る一発が2本ある。いずれも狙い撃ちで仕留めた当たりだ。
1本目は8月19日オリックス戦。安樂智大と金子千尋による投手戦は6回まで息詰まる0対0のスコアレス。その7回だった。ウィーラーが金子の初球カーブをとらえた。左翼席へ消えた放物線は試合を決める決勝ホームランとなった。
2本目は10月1日のオリックス戦。楽天打線が何度も煮え湯を飲まされてきたディクソンが繰り出す伝家の宝刀・ナックルカーブをこれまた狙って仕留めた。この一撃は、試合の主導権を大きく手繰り寄せる2ランになっている。
27本塁打の結果球の球速を確認すると、上は157キロから下は102キロまで。実に球速帯の幅が広い。シーズン途中に入団したペゲーロは10本塁打のうち7本が120キロから132キロと球速帯が偏っていたのに対し、ウィーラーはどの球速帯でも一発が飛び出している。
ウィーラーは145キロ以上のスピードボールにも強い。オリックスのコーディエが投げ込んだ157キロ、ロッテ・益田直也の147キロ、ソフトバンク・森唯斗が「エイヤ!」と投げた147キロ、西武・菊池雄星が繰り出す149キロを仕留めた。
遅いほうではオリックス・山田修義の102キロのカーブを仕留めた一発。直前に投げた球との緩急差が30キロもあったが、タイミングを合わせて角度のよいフライボールを生み出した。ほかにはDeNA・久保康友が定評のあるクイックで投げてきた113キロスライダーも崩されることなくとらえた。
そのウィーラーは「来年もイクワヨ」。来季も楽天への残留が濃厚と報道されている。
3年目となる2017年は、レアード、メヒアとともに激しい争いを繰り広げ、2007年の山崎武司以来となる球団2人目のホームランキングを目指してもらいたい。
文=柴川友次(しばかわ・ゆうじ)
信州在住。郷里の英雄・真田幸村の赤備えがクリムゾンレッドに見える、楽天応援の野球ブロガー。各種記録や指標等で楽天の魅力や特徴、現在地を定点観測するブログを2009年から運営の傍ら、有料メルマガやネットメディアにも寄稿。