―2008年のオフにホークスのユニフォームを脱ぐ時、“これから”のことをどう考えていましたか。
本間 何も考えていませんでした……それは考えられないですよね。現役でありながら「そろそろかな」と思う選手は本当にやめた方がいいと思います。自分は最後の最後までそういう気持ちにはなりませんでした。だから、球団に戦力外を伝えられた時に、その後のことを考える気持ちにもなれなかったんです。
―ソフトバンクを退団後、独立リーグのBCリーグ・石川ミリオンスターズで1年間、プレーを続けています。
本間 周りからは「ちょっとゆっくりした方がいいんじゃないの」と言われましたけど、野球を続けたかったんです。でも、独立リーグでプレーをしてみて、そこにいる若い選手にNPBに進むチャンスをあげた方がいいなと思って、1年でやめることにしました。
―そこからは?
本間 僕のことを気にかけてくれる方からいただいた話に、「やります」と答えるスタイルを貫いています。解説の仕事にしても、現役の頃は自分にはできないと思っていましたが、できないと決めつけることは簡単です。でも、やってみないとわからない世界がありますよね。だから、いただいた話はまず、挑戦してみようと。自分としては経験してみないと、イエス、ノーは判断できません。その繰り返しで、今、子どもたちへの野球の指導をしています。「本間さんにやってほしい」と声をかけてくれる方がいるのは、モチベーションになっていますね。
―ここからは野球の指導について聞かせてください。今、取り組んでいるのはどういう活動ですか。
本間 リーフラスという子ども向けのスポーツスクールなどを行っている会社に属しています。ほかにも、野球教室に呼んでもらっていますね。
―リーフラスでは「本間塾」を各地で開いていますが、指導を受ける子どもたちは何歳くらいですか。
本間 主に3歳から小学生までの子どもたちに野球を教えています。
―今日はBBC主催の「ベースボールチャレンジ」に特別講師として招かれて中学3年生の球児に指導していましたが、いろいろな世代の子どもたちと接すると、野球への見方が変わってくるものですか。
本間 いえ、自分にとっての野球の見方は変わらないです。ただ、指導の仕方という点では、教えるという感覚とはちょっと違いますね。
―と、言いますと。
本間 教えるというよりは、本気で野球を伝える。本気にならないと伝わらないので。自己満足で「今日はいい指導をした」と思っていても、相手に伝わらなければ意味がないですよね。だから、どう見られているかわからないですけど、とにかく真剣に、一生懸命に伝えようとするスタイルで接しています。
―子どもたちも様々。プロを目指す子どももいれば、そうではない子もいます。難しいところです。
本間 教え方には「こうしたらうまくなる」という正解はありません。だから、たくさんの子どもと接しながら、自分の引き出しを増やして、その子に合ったアドバイスをできるようにしなければいけないんです。自分の考えを押しつけるのでは駄目ですから。
―小・中学の野球部やクラブチーム、高校の野球部の監督ではないので、継続的な指導をできない難しさもあると思います。
本間 そうですね。でも、野球教室で頻繁に会う子もいます。そこで僕はひとつのアドバイスを「やってみたらどう?」と伝えることを心掛けています。その子にとって絶対にマイナスになることはないと思っているので、まずはそのアドバイスを受け入れてくれる信頼関係を、初めて会う子どもたちと築かないといけないですよね。
僕が元プロ野球選手ということで緊張してしまう子もいますが、そこは「僕との間には壁はないよ。いつでもウェルカムだよ」という姿勢で接して、リラックスしてもらうようにしています。
―野球を教える上で、その他にこだわっていることは?
本間 実際にプレーをして見せることですね。やっぱり“見せる説得力”は大きいので。だから、僕は今年で46歳になりますけど、現役時代から体型を変えていません。ちなみに、僕の父親は75歳ですけど、今も軟式の朝野球をやっているんですよ。僕も地域の軟式野球やソフトボールの試合があれば、積極的に参加しています。父親には負けていられないので(笑)。
―今は野球の競技人口も減少が問題になっています。実際、子どもたちにとって野球は必ずしも馴染み深いスポーツではなくなってきていますが。
本間 そこが楽しい半面、難しいところです。僕が子どもの頃とは生活習慣が変わってきて、スポーツをするにあたっての、そもそもの体の動かし方を知らない子も多い。例えば、股割りは、僕らは和式のトイレにかがむ中で、自然に身についていました。でも、今は違います。そこで、どうしたら体を動かしやすくなるのか、というところから教える必要があるんです。
―技術の前に基本的な体の動かし方ができない、というよりも知らないと。
本間 そうですね。でも、僕は幸い野球教室で3歳くらいの子どもに接して、動かし方を教えてあげることができます。それは野球以外のスポーツに進むにしても、大事なことですよね。
あと、先日亡くなられた星野(仙一)さん(元楽天監督ほか)が「結局は底辺拡大が大切だ。野球人口を増やさないといけない」と言っていました。その通りですよね。僕は今、野球教室を通じて「野球はこんなに楽しいんだよ」と子どもたちに伝えようとしています。野球の楽しさを知ってもらって、一人でも多く野球を続けてくれる子を増やしたいと思っているんです。
協力:日本プロ野球OBクラブ