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吉川光夫、五十嵐亮太、大松尚逸。ベテランになっての入団会見だからこその味わい深い名言

文=勝田聡

吉川光夫、五十嵐亮太、大松尚逸。ベテランになっての入団会見だからこその味わい深い名言
 プロ野球はペナントレースが終わり、ポストシーズンの熾烈な戦いが繰り広げられている。一方でフロントはドラフト会議を目前に控え、指名予定選手のリスト作成に勤しんでいるところだ。

 あと1カ月もすれば新入団選手との契約も終わり、入団会見が行われることだろう。新入団選手たちの入団会見は初めてということもあり初々しい。それが年月を重ねると、気の利いたコメントや思いの丈を言葉に乗せることができるようになってくる。

 今回は実績を積んだ選手たちが入団会見で発したコメントから、シチュエーションごとに使えそうなフレーズをピックアップしてみた。

喜びを背に決意表明


 一昔前と変わり現代社会では一つの会社に何十年と勤めることが激減した。転職することへの抵抗も減り、数年で勤務先を変えることも珍しくない。なかには「出戻り」となることも。

 その「出戻り」はプロ野球の世界でも今年あった。2019年6月に巨人から日本ハムへとトレードされた吉川光夫である。吉川は2016年オフに巨人へとトレードされており、日本ハムへ復帰した形になった。そのときの入団会見で発したのがこちらのセリフだ。

「また北海道でプレーできる喜びを感じています。おかえりなさいの期待に応えられるよう自分のできることをしっかりして、チームの力になりたい」

 古巣に戻ってきた挨拶としては満点に近いのではないだろうか。戻れたことの冒頭で喜びを表現し、周りの人からは「おかえりなさい」という温かい言葉がかかる。そのうえで自分が戦力になれるように頑張る、と決意しているのである。

ベテランでもワクワク感


 同じ出戻りでもベテランになると、感じ方は大きく変わる。今シーズンからヤクルトに復帰した五十嵐亮太のコメントがこちら。

「すごく新鮮な気持ちでこの時間を迎えているんですけど、多分チームメートに会ったときには今以上にワクワクしていると思います」

 五十嵐は入団から12年間、ヤクルトでプレー。その後、MLB、ソフトバンクを経て10年ぶりの古巣復帰だった。10年という歳月は長い。だからこそ、古巣でありながらも「新鮮」という表現がでてきたのだろう。

 その歳月の間にチームメートも大きく変わっている。出戻りではあるものの、自分の知らない世界がそこにはある、そんな思いが「ワクワク」という言葉から感じ取れる。

 自分自身に置き換えてみると、これから先10年以上期間を経てかつての所属に戻ったとき、ワクワクすることができるだろうか。野球(仕事)を楽しむことができていなければ、そうはならないのではないだろうか。

初心に返って楽しむ


 昨シーズン終了後にヤクルトから戦力外通告を受け、BCリーグ・福井ミラクルエレファンツへと入団した大松尚逸。野球選手としてはベテランとなる36歳(当時)という年齢でNPB時代とはまた違った環境に飛び込んだ。酸いも甘いも知っているベテランの言葉は子どものよう。

「まだ野球がしたいという気持ちでここまできた。若い選手と汗まみれになって、がむしゃらに野球を楽しみたい」

 まだまだ野球がやりたい。その思いを持って新しい環境に飛び込んだ。がむしゃらに野球をやっていた子どもの頃を想像させるような一言だ。

 仕事をがむしゃらにする。もしかしたら、長く会社で働くうちにそんな瞬間は少なくなってくるものなのかもしれない。アルバイトでもいい。それでも初めて仕事をしたときのことを思い返してほしい。

 きっとそんな一瞬があったはずだ。純粋無垢なその気持ちを思い起こさせてくれる。

 昨シーズン、吉川、五十嵐、大松はそれぞれの立場で新しい環境へと身を投じた。その決意表明となる入団会見の言葉には喜びや、ワクワク感、楽しみといった、大人になると忘れがちな言葉が散りばめられている。

 これは決して偶然ではないだろう。夢を与えてくれるプロ野球選手の言葉は、いつだってポジティブな感情を思い起こさせてくれる。そんな気がする。

文=勝田聡(かつた・さとし)

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