糸井は11月7日にFA権を行使した。糸井は在阪球団でのプレーを望んでいるらしい。となるとオリックス残留か、阪神への移籍か、二者択一だ。オリックスは4年18億の契約条件を出していると言われている。
普段はあまり注目されないオリックスだが、今回は阪神絡みということで関西での注目度が一気に高まった。日々、何かしらの糸井の情報が目耳に入ってくる。阪神は糸井にどのような条件を出してくるのか。関西ではかなり盛り上がっている。
オリックスから阪神へのFA移籍は、過去3例ある。振り返ってみよう。
■石嶺和彦
石嶺和彦FA元年の1993年のオフシーズンにFA宣言。交渉の末、阪神への移籍が決定した。移籍前の19993シーズン成績は打率.273、77打点、24本塁打。移籍後の1994年も打率.246、77打点、17本塁打と活躍した。しかし、その後は振るわず阪神で3年間プレーして引退となった。
■山沖之彦
山沖之彦は1994年オフにFA宣言。阪神へ移籍したものの故障の影響で1軍登板はなく、1995年限りで引退。筆者のなかに、阪神のユニフォーム姿の山沖はまったく印象に残っていない。
■星野伸之
星野伸之は1999年オフにFA宣言し阪神へ。移籍前の1999年は26試合に登板し11勝7敗、防御率3.85の成績で、移籍後の2000年は21試合で5勝10敗、防御率4.40と成績を落としてしまった。星野は阪神で3シーズンプレーしたが、オリックス時代の活躍はできず引退した。
逆に阪神からオリックスへFA移籍したのが平野恵一だ。平野は2007年オフのトレードでオリックスから阪神への移籍。その後2012年オフにFA移籍で阪神からオリックスへ出戻った。FA移籍後、オリックスでは3シーズンプレーし、引退した。
糸井が阪神にFA移籍をしたらどうなるだろうか? 糸井は現在35歳。普通の選手なら下り坂、もしくは引退かという年齢である。しかし糸井にはそんな常識は通用しない超人ぶりを見せ、今季もNPB最年長盗塁王を獲得。まだまだ元気な姿を見せてくれそうだ。
しかし阪神は人気球団だ。ファンの注目度が全く違う。そのプレッシャーに耐えられるのだろうか。かつて糸井はキャプテンに任命された。「キャプテンマークに重みを感じるか?」との質問に、「マークは軽い素材でできていますから」とボケてみせたが、実は重く感じていたのではないだろうか。その年の糸井は精彩を欠いた。
糸井は天然キャラと思われているが、実はとてもシャイな選手。ヒーローインタビューにはあまり出たがらない。熱狂的な阪神ファンが迎える甲子園のヒーローインタビューでちゃんと話すことができるだろうか。ちゃんと話せなくても、それはそれでうけそうな気はするが……。
オリックスファンとしては当然、糸井には残ってほしい。しかし、オリックスと条件が折り合わず移籍しても、それはそれで仕方がないと思っているファンも多い。
今後は、阪神がどんな条件でどのように交渉するのかに注目が集まる。糸井がどのように考え、決断するのか。糸井の決断は目が離せない。
文=矢上豊(やがみ・ゆたか)
関西在住の山本昌世代。初めてのプロ野球観戦は、今はなき大阪球場での南海対阪急戦と、生粋の関西パ・リーグ党。以来、阪急、オリックス一筋の熱狂的ファン。プロ野球のみならず、関西の大学、社会人などのアマチュア野球も年間を通じて観戦中。