あと一歩。高校野球の醍醐味ともいえるのは、やはり地方大会決勝戦だ。勝者は甲子園行き、敗者はかたや夏の終わり。明暗がくっきりと分かれるシーンだ。
選手が入れ替わる高校野球とはいえ、リベンジは見どころのひとつ。昨夏、悔しい思いをした「準優勝校」の今夏の戦績を追っていきたい。
(原稿執筆は7月21日時点)
甲子園一番乗りを決めたのは、北北海道代表の旭川大高。一方、2年連続で旭川大高を相手に決勝で涙を飲んだのはクラーク記念国際だ。昨夏のスコアは3対5。旭川大高のエース・沼田翔平(巨人育成3位)を攻め立て、あと一歩まで迫ったが、今夏は0対9の完敗。旭川大高はしっかりと新エース・能登嵩都を育ててきた。北北海道の強豪になっているクラーク記念国際だが、2016年夏以来2度目の甲子園切符を掴むには、旭川大高の壁を突き崩さなければならない。
青森県も面白い。壁に挑むのは弘前学院聖愛だ。昨夏は決勝で八戸学院光星に4対6で敗れたが、春の東北大会を制し、視界は良好。今夏も準決勝で東奥義塾を13対12で下し、決勝の舞台にたどり着いた。決勝の相手はまたもや八戸学院光星だ。本稿執筆時点は決勝戦前だが、もし弘前学院聖愛が勝てば、昨年のリベンジを果たしたことになる。
(※編集部注:7月23日、弘前学院聖愛は決勝戦敗退)
秋田では明桜が2年連続の決勝戦敗退。今年は春の秋田大会を制し、東北大会も準優勝。甲子園出場へ並々ならぬ闘志を燃やしていたが、秋田中央が立ちはだかった。8回表に4点差を追いついたものの、延長11回サヨナラ負け。しかし、地力は確実についている。1990年夏以来の甲子園勝利に向け、後輩たちはこの悔しさをバネにしたい。
昨夏の岩手大会準優勝校は盛岡大付。花巻東に3対4で敗れたが、今年は強力打線を引っさげ、打倒・佐々木朗希(大船渡)の最右翼と見られていた。しかし、3回戦で一関工に3対4で敗れて姿を消した。
作新学院が8連覇中、「ストップ・ザ・作新」がテーマの栃木。昨夏は白鴎大足利が決勝で0対2の接戦を演じたが、今夏はまさかの1回戦敗退。黒羽に0対1で敗れ、リベンジはならなかった。
群馬では健大高崎が2016年から3年連続で準優勝。3年連続で前橋育英と好ゲームを繰り広げていたが、今年は初戦で高崎商大付に7対9で敗れて姿を消した。フロックではなく、あと一歩の“確固たる強豪”でも「アレッ?」ということが起きるのが高校野球だ。
昨夏のあと一歩、かつ滋賀の大穴候補が綾羽だ。近江が戦力的にも頭ひとつ抜けていると言われているが、昨夏の決勝では4対8。今春も2対4と戦える水準に達している。近畿大会を制した近江のエース・林優樹に、県大会で13安打を浴びせており、打線はもはや全国レベル。ともにベスト8に勝ち残っており、ともに勝ち上がれば、準決勝で当たることになる。
(※編集部注:7月23日、綾羽は準々決勝で勝利)
山口では宇部鴻城が2016年から3年連続で準優勝。今年はエース左腕・池村健太郎、打線の軸の田中力、酒井隼平などタレントが揃い雰囲気は十分。悔しさを晴らすときがきた。
(※編集部注:7月23日、宇部鴻城は3回戦で勝利)
文=落合初春(おちあい・もとはる)