新旧プロ野球選手の必殺技にスポットライトを当てる本企画。今回は外野手の「レーザービーム」をフィーチャーしたい。
強肩外野手でまず思い浮かぶのはイチロー(元マリナーズほか)だろう。2020年現在、日本のみならず、アメリカでも「レーザービーム」は強肩を形容する言葉になっているが、実はイチローのプレーが正真正銘の語源だ。
メジャーデビュー1年目の2001年4月11日、打撃ではまだそれほど評価が固まっていなかったイチローだが、ライト前ヒットで一塁から三塁へ進塁を試みた走者を矢のような送球で刺した。
このとき、マリナーズ専属の実況アナウンサーのリック・リズが「Holy smokes! A laser beam strike from Ichiro!」(なんということだ、イチローからレーザービームが撃ち込まれた)と叫んだことが語源である。
しかし、実はこの放送はテレビ中継ではなくシアトル向けのラジオ中継。本来であればここまで広がるはずはなかったが、米・スポーツ局大手のESPNがその夜の『ベースボール・トゥナイト』でこの音声とともにイチローの好送球を紹介したことで、一気に「イチローのレーザービーム」は全米の注目を集めたのだ。
それまで「バズーカ」という形容はあったものの、剛腕ではなく、真っすぐ糸を引くような美しい送球。ファンを魅了する「レーザービーム」が生まれた日だった。
強肩外野手は数多く存在するが、異次元の存在だったのは中日で活躍した英智だろう。規定打席到達は一度もないが、その守備範囲と圧倒的なレーザービームでファンを沸かせてきた。
低い球筋でバチっとストライクを投げ込む、まさにレーザービームの持ち主だった。
さらに伝説になったのは引退試合でのセレモニーだ。ファンサービスを兼ねた「最後の一投」。三塁線からライトスタンドに大遠投をかますと、なんとボールはライトポールを直撃。最後の最後までその強肩とコントロールを見せつけた。
今季、最も期待がかかるレーザービームの持ち主といえば、やはりレオネス・マーティンだろう。昨年7月にロッテに加入。メジャーでも鳴らした強肩は、すでに千葉でも火を噴いている。低く、鋭く、強い。レーザービームの条件を備えた「鬼肩」を今年も見たい。
若手では辰己涼介(楽天)もすさまじい強肩を見せている。センターでの出場も多いが、ライトに置けば、相手の進塁を防ぐ「抑止力」になりそうだ。
また新人ながらすでにレーザービームで名を馳せているのは佐藤都志也(ロッテ)だ。本職は捕手だが、外野守備での送球能力も驚異的。捕手としても外野手としても「肩で飯が食える選手」の一人になるだろう。
文=落合初春(おちあい・もとはる)