プロ野球選手はインタビューや自身の著書で、様々な言葉を発している。野球人やファンだけではなく、野球に興味のない人にも理解でき、人生においてためになる(であろう)言葉は多くある。
そんなプロ野球選手の言葉を紹介したい。
仕事でも勉強でも趣味でもいい、なにかを向上させたいとき、階段を飛ばすかのように上へ上へと急いでしまうことが多い。それでうまくいくこともあるが、うまくいかないことのほうが多いだろう。それは、よくあるシチュエーション。だが、ちょっと待ってほしい。
松田宣浩(ソフトバンク)はこう言った。
「基礎を地道に積み重ねるほうが早く成長する」
新人時代の松田宣は開幕スタメンを勝ち取ったものの、すぐにファームへと降格。「プロの壁」が自身の前に大きく、そして高く立ちはだかった。ファームでは、当時2軍を率いていた秋山幸二監督のもと、素振りを繰り返した。そのときの経験が、のちのちのプロ野球人生に生きたと言うのだ。
基礎固めは地味だが、決して遠回りではなかったのである。あの基礎の積み重ねの日々が現在の松田宣を形成していると言ってもいいだろう。
階段を飛ばそうとせず、背伸びもせず、地道に基礎的なことを行う。これは仕事や勉強においても、地味で、つらく、退屈なことかもしれない。それでも、未来の成功をつかむためには大事な要素なのである。
人生のなかで立ちはだかる様々な壁。受験勉強や就職活動、社会に出てからの勉強や仕事ももちろん、どこかで壁はやってくる。それに打ち克つことが人間の成長の糧になることは間違いない。
村田修一(元巨人)は現役時代にこう語っている。
「壁の向こうには、必ず幸せが待っている」
横浜、巨人で長年にわたって活躍した村田にも多くの壁が立ちはだかった。その一つひとつから逃げることなく挑戦し続けた結果が、通算1865安打へとつながっている。
目の前に突如として訪れる壁。それを越えた先には、幸せが待っている、そう思うことができれば、普段以上の力を出せるのではないだろうか。
壁に打ち負けないためにも、成功後のイメージをしておくことが大事である。そんなことを村田は教えてくれている。
仕事でも勉強でもそうだが、ある一定の域に達すると現状維持を求めてしまうことはないだろうか。慢心や驕りとは違うかもしれないが、ある種それに近い心境となり、進化しようとするのを止めて、いや、諦めてしまうことは決して珍しいことではない。
そんなとき、巨人のエースである菅野智之の言葉を思い出したい。
「進化していかないとやられてしまう世界」
菅野が身を置いているプロ野球という世界は、やるかやられるかの真剣勝負。やられ続ければ、オフには自由契約となることもある。そのヒリつくような世界ではやはり「現状維持」をよしとしていては負けてしまうということだろう。
今年うまくいっても、来年は研究されうまくいかないかもしれない。そのためには進化が必要なことは明らか。シンプルなことであり、言葉にするのは簡単だ。しかし、その進化へ向けた努力を続けるのは楽ではない。
進化へ向かった努力をして、継続することができてはじめて一流への道が拓かれる。そんなことをあらためて教えてくれる言葉である。
■参考文献
『熱男のことば―球界最高のモチベーターが実践する究極のポジティブマインド』(講談社、松田宣浩 著)
『読売巨人軍語録集 闘魂録』(セブン&アイ出版、読売巨人軍 編著)
文=勝田聡(かつた・さとし)