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さる11月30日（土）から3日間にわたり、愛媛県松山市の坊っちゃんスタジアムに50選手（右投手14名、左投手7名、捕手6名、内野手12名、外野手11名）が集い、4年連続となる侍ジャパン大学代表強化合宿が開催された。
2016年参加組からは昨年のセ・リーグ新人王に輝いた東克樹（立命館大〜DeNA）を筆頭にドラフト1位3名を含む多くの指名選手が出ている。2017年組も巨人1位指名の高橋優貴（八戸学院大）や、プレミア12初優勝に大きく貢献したソフトバンク1位の甲斐野央（東洋大）はじめ10名がドラフト指名された。
さらに昨年の参加選手からもDeNA2位の坂本裕哉（立命館大）、ロッテ2位の佐藤都志也（東洋大）、ロッテ3位の高部瑛斗（国士舘大）、ソフトバンク2位・海野隆司（東海大）、中日4位・郡司裕也（慶應義塾大）の6名がプロへの扉を開いている。
では、今回の合宿ではどんな選手がインパクトを与えたのか？ 全3回にわたってお送りする連載企画「2020先取り大学生ドラフト候補・密着レポート！」の第1回は、来年のドラフト戦線を騒がせるであろう、右投手に逸材がそろった総勢14名の3年生投手を取り上げていこう。
「今年は投打にレベルが高いね」
いまや11月末から12月頭にかけての恒例行事となりつつある侍ジャパン大学代表強化合宿。これが3日間を通じ、NPBスカウト陣から一致して出た総括意見である。確かに筆者の目から見ても、「これは来年が楽しみ」と第一印象を抱く実力者は例年より多かったように感じる。
なかでも14名（右投手10名、左投手4名）が参加した3年生投手には逸材が多かった。まず昨年の北山比呂（日本体育大）に並ぶ「150キロ」を坊っちゃんスタジアムスコアボードに灯したのは明治神宮大会準決勝・城西国際大戦で先発し、5回7奪三振1失点の好投を演じた木澤尚文（慶應義塾大）。2回限定のなかで2安打2四球1失点した制球の甘さと球質の軽さは気にかかるが、常時140キロ台後半が出る地肩の強さにはやはり魅力がある。
木澤尚文（慶應義塾大）
木澤に次ぐ149キロを出したのは最速155キロのスリークオーター右腕・森博人（日本体育大）。右打者、左打者、内外角を問わず投げ込むカットボールやツーシームを含め「バランスよく投げられた」と自己分析。これは、スカウト陣の評価とも合致していた。
森博人（日本体育大）
「ほかにはない特徴だと思っている」。192センチの角度を存分に利用し、合宿では145キロ計測のストレートと、フォークやカットボールなど落下系変化球を自在に操ったのが河村説人（星槎道都大）。
白樺学園高3年夏の甲子園出場後は亜細亜大を1年途中で中退。翌春に再度大学入学するなど回り道もあったが、力感のないフォームからベース上で伸びる特長や、「伸びしろを感じる」と某球団スカウトが言う大物感はそのままに、現在の最速150キロを「常時」に変えることができれば、上位指名も十分狙える。
河村説人（星槎道都大）
また「肩回りの柔らかさから出るボールの質は森下（暢仁、明治大〜広島1位）より上」と担当スカウトが将来性を高く買っていたのが入江大生（明治大）。作新学院高時代、最後の夏は今井達也（西武）の陰に隠れ一塁手を兼任。肩の消耗度が周囲より少ないことも人気を呼ぶ要因となりそうだ。
入江大生（明治大）
さらに中川颯（立教大）も紅白戦での球速は最速130キロに留まったが、アンダーハンドの特性を生かせれば、今シーズンパ・リーグ新人王の高橋礼（専修大〜ソフトバンク）のような活躍も見込めるだろう。
このように、アピールに大成功した面々がいる一方で、「やや残念な」パフォーマンスに終わった3年生投手もいた。
本来、目玉投手の1人である最速153キロ右腕・山崎伊織（東海大）は、明治神宮大会前の右ヒジ炎症が回復せず、2年生左腕・佐藤隼輔（筑波大）とともに紅白戦での登板はなし。笑顔が絶えなかった練習中の表情を見る限り軽傷のようなので、来シーズンのスケールアップに期待したい。
また侍ジャパンU-15代表でのアジアチャレンジマッチ以来の坊っちゃんスタジアム登板となった左腕・鈴木昭汰と「変化球があるところをアピールしようと思った」と言う高田孝一の法政大の左右両輪は2回を無難に抑えたが、制球を乱した後に痛打を浴びた大道温貴（八戸学院大）、宇田川優希（仙台大）と同様、迫力不足は否めない内容に終わった。
紅白戦での最速は137キロだった藤村哲之（横浜商科大）と、同じく最速143キロの山野太一（東北福祉大）の両左腕は、要所を締める技巧派の特長は出したが、ドラフトの観点から見れば三振を確実に取れるボールが欲しい。
そして昨年の強化合宿ではストレート、変化球ともに出色のパフォーマンスで侍ジャパン大学代表入りまで駆け上がった最速151キロ左腕・早川隆久（早稲田大）は、静岡県内で開催されたオール早慶戦から移動した翌日に登板となった影響か、紅白戦では最速143キロで2回5安打2失点という厳しい内容に。主将を示す背番号「10」の重みが投球に影響を与えないことを心から祈りたい。
ここまで記した3年生投手は13名。残り1人となったこの男の出来は年齢だけでなく、内容も一段別格だった。駒澤大を1年途中で中退し、苫小牧駒大に再入学後は2年、3年時に侍ジャパン大学代表入りしている最速155キロ右腕・伊藤大海だ。
紅白戦では30球中29球が「ボールを押しつぶす感覚で投げている」ストレートだったが、ボールは最速147キロ以上の勢いでキャッチャーミットに突き刺さり、2回無安打4奪三振以上に「2回程度なら大学生では打てない」（某球団スカウト）強烈なインパクトをネット裏に与えた。
例えるならば藤川球児（阪神）のような火の玉ストレート。守護神としての起用が有力な侍ジャパン大学代表を含む2020年にこの状態を維持できれば「苫小牧駒大に再入学した時から目指していた場所」であるプロ入りはもちろんのこと、1位指名での競合は確実な情勢であろう。
伊藤大海（苫小牧駒澤大）
取材・文＝寺下友徳（てらした・とものり）
