大学野球の二大中心リーグといえば東京六大学リーグと東都大学リーグ。『全国高校野球大図鑑2018』にはこの両リーグへの進学した選手の数、そして、そこに高校から直接社会人野球のチームに進んだ選手の数も合わせた「進路ランキングTOP50」が載っている(社会人も視野に入れるならば名門大学リーグ進学は大きな岐路となる)。
もちろん近年では地方の大学野球リーグも力をつけているため、両リーグへの進学だけがプロ入り、もしくは就職に有利というわけではないが、「高いレベルで野球をやり続けて将来の生活設計の見通しもよい」という進路を臨むなら、かなり精度の高い指標となるはずだ。
まずはこのランキングのトップ20を見てみよう。
■進路ランキングTOP20
1位:慶應義塾(神奈川)
2位:早稲田実(西東京)
3位:桐蔭学園(神奈川)
4位:立教新座(埼玉)
5位:PL学園(大阪)
6位:法政二(神奈川)
7位:浦和学院(埼玉)
8位:日大三(西東京)
9位:國學院久我山(西東京)
10位:常総学院(茨城)
11位:中京大中京(愛知)
11位:大阪桐蔭(大阪)
13位:静岡(静岡)
14位:愛工大名電(愛知)
14位:法政大高(西東京)
16位:早大本庄(埼玉)
17位:横浜(神奈川)
17位:神戸国際大付(兵庫)
17位:慶應志木(埼玉)
20位:春日部共栄(埼玉)
桐蔭学園、浦和学院、日大三、常総学院、中京大中京、大阪桐蔭、愛工大名電、横浜、神戸国際大付、春日部共栄といった甲子園常連校、あるいは地域の強豪校から東京六大学リーグ、東都大学リーグ、社会人野球チームというアマチュア野球トップへ進む率が高いのは想像がつく。ただ、全国には数多の強豪校がある。そのなかでも「特に高い率」ということでは、高校進学にある程度選択の余地があり、両リーグ、あるいは社会人も睨んでいる有望中学球児は上記の高校を視野に入れてもいいのではないだろうか?
さて、全ての中学球児がプロを目指しているわけではない。だからとって手を抜いているわけでもない。野球も勉強もやりきって将来は仕事に全力プレー。そんな人生もいいと応援したい。となると、前述のランキングで気になる高校がいくつか見えてくる(慶應義塾、早稲田実というツートップはひとまず置いておく。別格ということで……)。
私事で恐縮だが、筆者は中学3年の頃、東急田園都市線の教育熱心な新興住宅街に岡山から引っ越してきた。部活の最中にポケットに入れた英語単語帳を見るのが当たり前の風景。3学期になると高校は通過点で東大を目指す生徒は朝から予備校にカンヅメで学校にこない。普段、小言を言う先生も怒らない。そんな中学校だった。
あの思春期に、進学に敏感な同級生たちが選択肢のひとつとして受験していたのが、早大本庄だった(電車を乗り継いて余裕で2時間を超えそうだったが)。そして國學院久我山は狙い目の穴だった。また、人気だったのは文字数の関係で割愛したが、ランキング50に出てくる明大明治(西東京)、明大中野(東東京)、明大中野八王子(西東京)、慶應藤沢(神奈川)、早大学院(西東京)だった(地域柄、東京、神奈川の話になって申し訳ない……)。
東京六大学リーグ、東都大学リーグへの進学率となると付属校が多くなってしまうのは致し方ないが、プロになる力はないけど、アマトップクラスでやりきりたい東京都心部の中学生にも上記の高校はよいのではないかと思う。また、きっと東京都心部以外の地区にも同様のケースはあると思う。とはいえ、「結局、付属校?」という意見もあるかと思う。ならばランキングには入っていないが、それらの大学への進学率が高い公立進学校、且つ、野球部が活発な高校も選択肢に入ってくるのではないだろうか。
最後に。近年、超ハイレベルな文武両道を頑固に貫いてプロ野球選手になったのは2016年ドラフト1位で広島に入団した加藤拓也。加藤は慶應義塾大のユニフォームを着て神宮球場のマウンドに立つ、と決意して慶應義塾高に一般入試で合格。高校時代は捕手の補欠からスタートして投手転向、そして東京六大学リーグを代表するエースとなった。
人生いろいろ。大学、社会人を含めての将来を考えると悩むのは当然。絶対にプロになりたい、いや俺はそんなに……。それも当然。それぞれの立場で考え、どうするのか。そんな人生の岐路にある若人に『野球太郎SPECIAL EDITION全国高校野球大図鑑2018』が何かしらの参考になれば嬉しい。
文=山本貴政(やまもと・たかまさ)