昭和50年代前半、日本中に社会現象を巻き起こしたアイドルデュオ・ピンクレディー。1978年3月にリリースされた曲のタイトルは「サウスポー」。
「背番号1のすごい奴」と左アンダースローの女性投手が対戦するという、水島新司作の漫画「野球狂の詩」の主人公・水島勇気を彷彿とさせる世界観の曲だ。振り付けでもイントロでピンクレディーの2人が左腕で下から投げる場面も登場する。
この曲で登場する「背番号1のすごい奴」はもちろん、世界のホームラン王・王貞治(巨人)のこと。前年にはハンク・アーロンの持つホームラン世界記録を塗り替えたという時代背景もあり、前作「UFO」に続くミリオンヒットとなった。現在でも高校野球の応援曲の定番として根強い人気を誇っている。
この曲を作詞した阿久悠は、映画化された小説「瀬戸内少年野球団」、夏の甲子園期間中にスポーツニッポン紙上で連載していた「甲子園の詩」、西武ライオンズ球団歌「地平を駈ける獅子を見た」の作詞など野球との縁が深い。
自身では「君は天然色」「幸せな結末」、楽曲提供で松田聖子「風立ちぬ」、森進一「冬のリヴィエラ」などヒット曲の多いミュージシャン・大瀧詠一。2013年年末に報じられた突然の訃報には多くの人々がショックを受けた。
その大瀧詠一が1984年に発表したアルバム「EACH TIME」で収録されているのが「恋のナックルボール」だ。好きな女性をデートで野球観戦に誘い、何とか彼女の気を引きたいと心情が揺れる様は不規則に変化するナックルボールのよう。大瀧詠一独自の世界観を感じさせる一曲だ。
ちなみに、大瀧詠一の母校・岩手の釜石南高校は現在の釜石高校。来月行われるセンバツ高校野球に21世紀枠として出場する。
1990年にリリースされたアルバム「誰がために鐘は鳴る」に収録された一曲。引退間近のベテラン選手の心情を歌った曲であり、サビの部分は「野球の原点」というべきフレーズがちりばめられ、野球好きなら思わずグッとくるような野球愛に満ちあふれている。一般的には浜田省吾と親交の深いプロ野球選手・高橋慶彦(現オリックス打撃コーチ)をモデルにし、エールを送る意味で作った曲と言われている。
野球選手でもこの曲のファンは多く、川相昌弘(巨人3軍監督)は登場曲として使用していた。また、2003年ごろには東京ドームでの巨人戦の試合前に流れるなど、野球ファンの間でも知られている。
1977年9月に発表されたアルバム「いろはにこんぺいとう」に収録。「柳田」とはもちろん「ギータ」ことソフトバンクの柳田悠岐ではない。巨人・第1次長嶋茂雄監督時代に活躍した「マムシ」こと柳田真宏のことだ。1977年の柳田は張本勲、王貞治とクリーンアップを形成。打率.340、21本塁打と大活躍しリーグ連覇に貢献し「巨人最強の5番打者」と呼ばれた。
曲の中では当時の巨人のオーダーが歌詞になっており、「4番・王」や「6番・土井」が、矢野顕子独特のアレンジで歌っているのは注目すべきポイントだ。巨人ファンの矢野顕子は他にも「ジャイアンツを恋うる歌」と巨人をテーマにした歌を作っている。
文=武山智史(たけやま・さとし)